SUUMO副編集長「若者は"その都度最適"と"資産性"で家を選んでいる」

笠松美香(SUUMO副編集長)
 今、一部の若者の間で、一つの家で共同生活を送る「シェアハウス」や、家を持たずに各地を転々と移動する「ノマド生活」など、新しい住み方・暮らし方が支持されている。若者の「家」に対する価値観が変わってきたのか? リクルート『SUUMO』の笠松美香副編集長に話を聞いた。
(『中央公論』2021年12月号より抜粋)
目次
  1. 20代も家を持ちたいと考えている
  2. 住宅開発と家族の変遷

20代も家を持ちたいと考えている

――最近若い人を中心に、できるだけモノを持たない生活が人気のように見受けられますが、若者の間では、持ち家を持たず、賃貸で身軽に暮らすライフスタイルが支持されているのでしょうか。

 私たちSUUMOは全国の不動産情報など、住まいに関する情報をサイトや雑誌から提供しています。「若年世代の居住ニーズの変化」についても最近調査をまとめましたので、今回はそれを基にお話しします。ここでは「若者」の定義を20代としたいと思います。

「最近の若者の間では、持ち家よりも賃貸が選好されているか?」という質問について、その問いをズバリ調査したことはありません。しかし、各種調査を総合的に踏まえると、若者は家を持ちたいと考えており、賃貸を選好しているわけではないと見ています(図1)。

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 時代と社会が変化し、若者の「家」に対するイメージは、かつてのものから大きく変わりました。今の若者の特徴を端的に表現すると、「都度最適」と「資産性」を重視して住まいを選んでいるように思います。

「都度最適」とは、独身だったり、結婚や、子どもが生まれたりなど家族の変化、職場の変化や趣味のためのもう一つの拠点など、その時々のライフスタイルに、「その都度、最適」な住居を選んで生活するということです。「資産性」とは、そのような変化に合わせて売り買いするときに、希望する価格で取引できること。若者はその資産性を重視して家を選んでいます。都心のマンション価格は高騰していますが、低金利の現在、利息で資産を増やすよりも、住宅ローンを組んで資産に変えていくことのほうが魅力的に見えているのだと思います。

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