大屋雄裕 新型コロナによって生じた個人の自由の制限について考える
大屋雄裕(慶應義塾大学教授)
たばこも身近なニューサンス
新型コロナを例に話してきましたが、身近なニューサンスの一つに、たばこがあります。
たばこは受動喫煙や臭い、煙などが問題になるため、東京都と神奈川県の「受動喫煙防止条例」では、原則として飲食店内は禁煙です(従業員がいないなどの条件を満たした一部の店は除く)。しかし私は、たとえば、経営者や従業員も含めて喫煙者専用のカフェがあってもいいと思います。もちろん喫煙者専用という表示は必要です。それでもよいと思えば入ってください、嫌ならやめてくださいというかたちにすれば、喫煙可でも問題ないはずです。フジロックの会場で大音響でヘビーメタルを演奏しても、他の人から十分に距離が取れていて、聴いているのはヘビーメタルが好きな人ばかりなら問題にはならないのと同じことです。
その意味で、この受動喫煙防止条例は適切ではないと考えます。科学的、合理的な根拠に基づく空間の分離ではなく、道徳主義的な判断に依存してしまっているように見えます。