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千々和泰明 「安保三文書」改定がもたらす政策の変化

千々和泰明(防衛省防衛研究所主任研究官)

改定の背景にあるもの

 前回の安保三文書が策定された2013年(防衛大綱と中期防は18年に改定)と比べると、中国や北朝鮮の脅威の増大に加え、今年2月にはロシアが国際法を踏みにじるかたちでウクライナに侵攻するなど、安全保障環境には大きな変化があった。この点一つをとってみても、中国への対応を重視する文脈でロシアを協力相手と位置づけている現在の国家安保戦略の見直しは避けられない。東アジアにおいても、8月のペロシ米下院議長の台湾訪問に反発した中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を実施するなど、台湾有事への懸念が消えない。

 また、宇宙・サイバー・電磁波といったいわゆる「新領域」への対応はもとより、人工知能(AI)を搭載した自律型の無人機、極超音速兵器、レールガン(電磁砲)、高出力レーザー兵器、量子科学技術など、近年の軍事技術の劇的な進歩にも追いついていかなければならない。

 岸田文雄政権下で今年予定されている安保三文書の改定は、同時改定としては初めてである。9月には「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が発足し、改定に向けた議論が加速している。たとえリーダーが交代しても、戦略を上位に置く政策文書の体系は今後も継承されるものであり、内容を適時アップデートしていくという意思を内外に示す意味は小さくない。

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