日本医療の構造的課題と流すべき「血」
木下翔太郎(慶應義塾大学特任助教)
収益を上げづらい理由
病院が赤字になる原因はさまざまであるが、近年は主に物価高や人件費高騰の影響があるとされる。物価や人件費が年々上昇する一方で、診療報酬の引き上げが追いつかず、病院が収益を上げづらい構造が続いているのである。
診療報酬の中で定められた医療の公定価格は全国どの医療機関でも共通のものであり、医療機関が経営状況に合わせて単価を変更することはできない。加えて、診療報酬は2年に一度の改定であるため、近年のように物価高や人件費高騰が短期間で進んでも、それらを踏まえた価格になるまで時間がかかる。さらに、診療報酬は、財政的な制約から総額が大幅に増加しないよう抑え続けられているため、物価高などと連動して上昇するとは限らない。政府は、国全体の医療費である「国民医療費」が高齢化などの理由により年々上昇を続ける中で、その伸びを抑えるべく、診療報酬改定の際に、削れるものについては従来よりも低い価格に設定することも珍しくない。こうしたことから、物価や人件費の上昇に見合った診療報酬の増額ができないために、赤字になる医療機関が増加しているのが現状である。