オンラインサロンに人は何を求めているのか
- 近年の動きと流行
- 学びの場? それとも?
- 五つの分類から見えるもの
近年の動きと流行
ここ数年、隆盛を見せている「オンラインサロン」。この言葉に厳密な定義はないが、有名タレントや著名人とコミュニケーションをとったり、専門的なスキルの情報を入手したり、あるいは会員同士で交流をはかったりする、実名登録が基本のクローズドな月額会員制コミュニティの総称である。
近年、特にコロナ禍における新しいコミュニケーションの場として期待される一方で、一握りのカリスマとそれをとりまく信者で構成された集金システムという批判もある。本稿は、そんな評価が揺れ動くオンラインサロンの現在と今後について考察するものだ。
オンラインサロンというシステムは特に日本で目立っている。窓口や運営、決済自体はオンラインプラットフォーム会社で、またコンテンツの投稿はFacebookやZoomなどの非公開コミュニティで行われることも多く、技術的な参入障壁が低いという特徴がある。後述のDMM オンラインサロンや、クラウドファンディング事業で有名な「CAMPFIRE Community」を筆頭に三〇以上の企業が参入しており、大手二社のサロン数だけでも、三〇〇〇組以上が存在している。
二〇一二年に「Synapse」がオンラインサロンプラットフォーム事業を開始(二〇一七年にDMM.comによる子会社化で「DMMオンラインサロン」へ名称変更)。第一弾のサロンは実業家の梅木雄平による「Umeki Salon」だった。
その後、二〇一四年に堀江貴文が「堀江貴文サロン」(現在は「堀江貴文イノベーション大学」)を開設。さらに、二〇一六年にお笑い芸人のキングコング・西野亮廣が「秘密結社おとぎ町商工会」(現在は「西野亮廣エンタメ研究所」)を、二〇一八年にはオリエンタルラジオ・中田敦彦が「PROGRESS」を開設し、一般層でも知名度が高まっていった。
黎明期はITやビジネスのサロンが目立っていたが、認知度が上がるにつれて、婚活、メイクアップ、ヨガ、バイク、銭湯など、バラエティに富んだジャンルのサロンが登場するようになった。
たとえば、DMMオンラインサロンが毎年開催している「DMMオンラインサロンアワード」の昨年の大賞は、パチンコ・パチスロYouTubeチャンネルを運営しているギャンブル系YouTuber、1GAMEてつ主宰の「遊び人ギルド」だ。一方のCAMPFIRE Communityの会員数一位は、本来なら廃棄されていた傷や欠けのある宝石を低価格で販売する、実質宝石の定額通販サービスである「カケラ宝石サロン」だ。
オンラインサロンという言葉で世間がイメージするものからはやや外れたサロンも人気を博していることがわかるだろう。現在、オンラインサロンは、YouTubeやツイッター、ブログなどで知名度を獲得したさまざまなジャンルのインフルエンサーにとっての「次のステップ」の場となっている。
たいした知名度のないエンタメ系のライターである筆者も、実は過去にオンラインサロンプラットフォーム企業二社から、「あなたのオンラインサロンを作りませんか?」という打診のメールを受け取った経験がある。自分がコミュニティを運営できる自信がないため丁重にお断りしたものの、サロン側もさまざまなジャンルの人間に声をかけていることがうかがえる。