オンラインサロンに人は何を求めているのか

評価が揺れ動く今、その実態を見る
藤谷千明(ライター)

五つの分類から見えるもの

 マンガファンのコミュニティアプリ「アル」を運営し、サロン「アル開発室」を主宰するIT実業家のけんすう氏は、オンラインサロンを、次の五つに分類する。

 ①ファンクラブ型

 従来の月額制ファンクラブに近く、課金をするとメンバー限定コンテンツが閲覧できるというもの。当然多数のファンを抱えるアイドルやミュージシャンによるサロンが多く、韓国のWeverseやV LIVE、国内ではFaniconなどが有名だ。従来のファンクラブと異なるポイントは、ファン同士のコミュニケーションもメインコンテンツの一つとなっているところだろうか。

 ②新しい働き方型

 サロンを通してのプロジェクトでさまざまな仕事を経験することにより、未経験から本業にステップアップできたり、学生や専業主婦など、フルタイムで就業できない環境の人でも、好きなジャンルの仕事に関わることができるというタイプだ。編集者や放送作家によるサロンを通してクリエイティブ職を経験しようと参加する者も多い。ただ、このスタイルは「やりがいの搾取」につながりかねないという落とし穴もあるので注意が必要だ。

 ③情報型

 いわゆる「情報商材ビジネス」で、会員のみに限定して投資情報や儲け話を配付する。中には金額に見合った情報のケースもあるが詐欺も多く、詐欺ではない場合でも、実際に儲かるノウハウを取得した後には退会してしまうので、常に新規会員を獲得できる知名度や戦略がないと短命に終わってしまう。

 ④コミュニティ型

 横のつながりができることを目的にし、同じ目的を持った者同士で切磋琢磨するタイプ。K子さんは中田氏のサロンをこの形で楽しんでいるといえる。搾取でも詐欺でもない、オンラインサロンとしては一見理想的に見えるが、コミュニティ内でメンバー同士のトラブルが発生するなど、運営は非常に難しいという。

 ⑤物語型

 著名人やスポーツ選手、あるいは何らかのプロジェクトに関わることで、「物語」を体感できるタイプ。最前線で活躍する人の生の発言や投稿をコンテンツとして閲覧できる。本人やプロジェクトに続ける意思がある限りはコンテンツが発生するので、継続しやすい。

 これらは綺麗に分かれているわけではなく、複数の要素を持つオンラインサロンももちろん存在する。

 

(『中央公論』2021年8月号より抜粋)

中央公論 2021年8月号
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藤谷千明(ライター)
〔ふじたにちあき〕
1981年山口県生まれ。工業高校を卒業後、自衛隊に入隊。その後職を転々とし、フリーランスのライターに。主に趣味と実益を兼ねたサブカルチャー分野で執筆を行う。著書に『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』、共著に『すべての道はV系へ通ず。』など。
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