寺西ジャジューカ お笑い界の競技化がもたらしたもの――芸人にとって歓迎すべき状況か否か

寺西ジャジューカ(フリーライター)
写真提供:photo AC
「M-1グランプリ」などへの注目が年々高まる中、お笑い界にはどのような変化が起きているのか。リアリティーショー化、松本人志の巨大な影響など……フリーライターの寺西ジャジューカさんが読み解きます。
(『中央公論』2022年6月号より抜粋)

 昨年12月26日放送回をもって林家三平が「笑点」(日本テレビ)を卒業した。「実力不足」「回答がつまらない」と視聴者からの風当たりが強かった彼は、5年半の在籍中に座布団10枚を一度も達成することができなかった。野々村真でさえ、「世界ふしぎ発見!」(TBS)で全問正解のパーフェクトを2週連続で達成したことがあるというのに。そう考えると、やはり三平の実力不足は否めなかった......のか?

「笑点」は今、dボタンを使ってメンバーに座布団をあげたり取ったりする視聴者投票が可能な仕組みになっている。今年1月15日放送のラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)が三平の卒業問題を取り上げた際、論客としての顔も持つ芸人のマキタスポーツがこんなことを口にしていた。

「あんまり角立てて話したくねえけどさ、dボタンの投票できるんだったらみんなつまんねえ(全員に座布団をあげない)ってことにもなるぜ? そんな尖ったネタなんか必要じゃねえってところになっちゃってるからさ」

 同感である。多くの人は「笑点」にシビアな笑いは求めていなかったし、もっと牧歌的な番組だったはずだ。「M-1グランプリ」(朝日放送)を機に採点式スポーツの如く、バラエティを競技化する文化が主流となっていった。島田紳助が2001年にM-1を立ち上げた際、目的としていたのは「(若手)芸人に辞めるきっかけを与えたい」だった。巡り巡って、三平が「笑点」を辞めることになるとは。

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