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西澤千央 ひな壇というシステムは何をもたらしたのか――「アメトーーク!」を起点に考える

西澤千央(フリーライター)

オルタナティブとしての動画配信

 一方、芸人の世界に、ひな壇と相反するものが台頭する。YouTubeである。キングコングの梶原雄太がユーチューバー「カジサック」として〝リニューアル〟を果たしたのが2018年。当時の芸人界を彼はこう述懐する。

「色んな媒体が出てきて、テレビが衰退しているっていうのは事実でしたね。その一つとして、テレビの"高齢化"があった。目先の数字を追いかけたら、より(年齢層の)高いところをターゲットに番組作りをしていかなくてはならない。バラエティ番組が「MCがいてひな壇がある」というシステムばかりになって、ただその座組でテレビをずっと作っていたら、もうよっぽどのことがない限り若いスターが生まれないんじゃないかなって。才能ある若手が出てきてひな壇で結果残しても、次は別の番組のひな壇に座らされて、さらに別の番組のひな壇に座らされて......というね。スターを生むために番組があるのではなく、そのシステムにぴったりくる芸人だけが生き残るっていう状況です」「今のテレビのシステムではスターが生まれないから。面白いこと、自分が見せたいパフォーマンスが、ひな壇っていう座組では100%出せないんですよね。持ち時間が少なすぎるっていうのもある。1時間番組で一人3分があっていいところじゃないですか。でもYouTubeだと時間を自由に操れる。自分で全て考えて、自分で編集もできて、自分が面白いことを100出せる」(『Quick Japan』vol.150)

 ユーチューバーを「芸人の真似事をしている」と冷ややかに見ていた芸人たちが、「自分たちの好きなことができる場所」として徐々に参入していき、コロナ禍を契機としてさらに多くの面々が加わっている。メディアが増えたことで、芸人のキャリアパスとして必須だった「ひな壇」をあえて選択しない芸人も出てくる。

 取材で若手芸人に「どうなれば芸人として成功だと思いますか?」と質問すると、「自分たちのやりたいことができれば、月収は20万でも構わない」という答えが返ってきたりする。それは芸人としての成功が、MCになって冠番組を持つこと、お金持ちになることとイコールだとは考えない、オルタナティブな思考の到来でもあるのだと思う。テレビが「何がなんでも絶対出たいもの」ではなくなっている。それは一種の働き方改革であり、ひな壇のシステムでサバイブするより大切なことを彼らが見つけ出している証左でもある。

「テレビの仕事をあんまり全部受けてない」「テレビは一番好き。一番出たい媒体だけど、(自分には)NGが多い。食レポがまず(NG)。食べなくても大丈夫ですか? って(スタッフに確認した)」「クイズとかもそうなの。答えなくても大丈夫ですか? と」

 これは昨年M‐1決勝に進出し、ブレイクを果たしたランジャタイの国崎和也(くにさきかずや)がYouTubeで語っていたことである。テレビに出ることより、自分たちのお笑いを優先したい。芸人が「自分たちにとってより「得」になるもの」を冷静に選びはじめている。

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