矢澤澄道 『月刊住職』編集長インタビュー「日本のお寺はなくならない」

矢澤澄道(『月刊住職』編集長・安楽寺住職)

歴史的にお寺に関心がない国民性

 日本の市井のお寺の側も、庶民に多くの金銭的負担は求めてきませんでした。その理由には日本特有の歴史的背景があります。

 庶民がいずれかのお寺に所属し、葬祭の一切を取り仕切ってもらう「檀家制度」ができたのは江戸時代になってからです。遡れば、奈良時代のお寺は国や貴族が建立したものでしたし、その後の寺領荘園制も庶民に負担がかからなかった。

 そのような経緯もあって、日本のお寺は「葬式仏教」と揶揄されるように、数十年に1度、葬儀を出す時や、伽藍を新しくする時など以外は、支出を強いられないという意識が庶民に根付いてきたのです。

 身を削って働いて得た収入から、宗教にどのくらい費やすかが、宗教観・人生観をある程度表しているとすれば、歴史的に日本人はお寺を意識してこなかったことになります。ですから、ここ数年で「急激に関心が薄れてきた」という言説は、当てはまりません。

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