「スーパー戦隊シリーズ」50年の歴史に幕......初代ゴレンジャーが語るヒーロー番組の本髄
シリーズ50年の変化
鈴木 「ゴレンジャー」は初めて女性を、本格的な戦うヒロイン、モモレンジャー(変身前のペギー松山役・小牧りさ)として描いた作品ですね。それまでヒーロー番組の中の女性の役割は、基地で通信を担当する補佐役や、敵に捕まる人質要員にとどまっていました。それに対して、モモはチャーミングなのに強くて、他の4人の男性と対等に戦った。戦闘時の声も「トイヤ!」と勇ましく、ヒロインというより「女性ヒーロー」という趣でカッコよかった。
宮内 僕らも、女性を含めた5人が対等に並んで戦うことに違和感は全くなかった。小牧りさは蹴りが得意で、脚が高く上がる。そこで、殺陣(たて)師が毎回蹴り技を取り入れた。女性が蹴り上げて敵の戦闘員がやられるのがカッコいいから、と。
鈴木 そんな女戦士、モモレンジャーが登場した1975年が国際婦人年だったという事実に、記者としてはちょっと興奮します。(笑)
宮内 その後の女性ヒーローはどうなっていくのですか?
鈴木 84年の「超電子バイオマン」では、女性がピンクとイエローの2人に。この翌年に男女雇用機会均等法が成立します。91年の「鳥人戦隊ジェットマン」では管理職である長官役が初めて女性になりました。99年の男女共同参画社会基本法施行を経て、21世紀に入ると「騎士竜戦隊リュウソウジャー」のピンクのように「怪力で大食漢」など、一見女性らしからぬ個性のヒロインも登場しました。世相を反映して、戦隊界でも男女共生が進んできたと感じます。ピンクも女性の限定色ではなくなり、2022年の「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」では男性がピンクのヒーローに変身しました。
宮内 なるほど。当時からモモは、女の子たちに絶大な人気がありましたからね。
鈴木 それにしても「ゴレンジャー」を今見ると、25歳設定の新命をはじめ、全員が大人っぽい。18歳のモモやメンバー最若手17歳設定のミド(変身前の明日香健二役・伊藤幸雄)も現代の戦隊と比べると年長に見えます。
宮内 役の上でも、役者としても、大人の集団でした。アオはメカの操縦に長けており、モモは爆発物処理なら右に出る者がいない。全員が何らかのスペシャリストとして集まったのがゴレンジャーだから。演じる役者も既に実績があり、個性が確立していたから揉めることもありませんでした。
鈴木 特に24歳設定のアカは「おじさん」と呼びたい落ち着きで、「月光仮面」(1958年)以来の「ヒーロー=頼れる大人」というイメージを体現しています。その後、戦隊のレッドはバブル期(80年代後半から90年代初頭)に「隣のお兄さん」的な若者になり、21世紀に入ってからは、1年間かけて視聴者とともに成長していく「少年」になった、と私は分析しています。これも、昭和から平成、令和という時代の変遷を反映していているようで興味深い。大人が子供っぽくなったと言われ、素人がもてはやされることが増えた時代を映しているようです。
宮内 自分が出演しない作品はあまり見ていないけれど、変わってきているのですね。
(『中央公論』3月号では、この後も宮内氏が「ヒーロー番組は教育番組だ」と考えるにいたった背景、その言葉を体現するうえでの私生活での努力、これからのヒーロー番組に期待するものなどについて語られている。)
東京都生まれ。東映12期ニューフェース。1969年デビュー。73年「仮面ライダーV3」(毎日放送制作/NET=現朝日系)に主演して人気者に。75年「秘密戦隊ゴレンジャー」(NET系)に出演。「ジャッカー電撃隊」(テレビ朝日系)や「超力戦隊オーレンジャー」(同)、「快傑ズバット」(東京12チャンネル=現テレビ東京)などヒーロー番組に多数出演。著書に『ヒーロー神髄』がある。
◆鈴木美潮〔すずきみしお〕
1964年東京都生まれ。米ボストン大学在学中に連邦議会下院議員事務所インターンを経験。88年、ノースウェスタン大学大学院修士号(政治学)取得。89年、読売新聞社入社。政治部、文化部などを経て現職。日本テレビ「イブニングプレスdonna」「ラジかるッ」「PON!」に出演。著書に『昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか』『スーツアクターの矜恃』がある。





