鈴木由美 「鎌倉殿の13人」ロスの方々に捧ぐ、北条氏をめぐるブックガイド

鈴木由美(中世史研究者)

武士たちの生活を知る

「鎌倉殿の13人」では、北条義時たちが暮らす伊豆や鎌倉の街並み、富士の裾野で行われた巻狩〔まきがり〕(狩場を四方から多人数で取り囲み、獲物を中に追いつめて捕らえる狩り)、将軍御所での蹴鞠(けまり)、はたまた和田義盛邸で鹿鍋を囲むシーンなど、その時代の武士たちの生活も映し出されていた。

 西田友広『16テーマで知る鎌倉武士の生活』(岩波ジュニア新書、2022年)は、「鎌倉武士の人生」「鎌倉殿への奉公」などといったテーマに沿って、北条義時も含めた鎌倉武士の生活の様子が平易かつ丁寧に記されている。ジュニア向けではあるが、的確で充実した内容となっており、「鎌倉武士の食生活」「鎌倉武士の娯楽」など楽しそうなテーマもある。図版も多く、彼らの生きた姿が具体的に浮かんでくる。

 伊藤一美『新知見!武士の都鎌倉の謎を解く』(戎光祥〔えびすこうしょう〕出版、2021年)は、「鎌倉武士の人間模様」「〝かまくら〟が刻んだ土地の記憶」「幕府滅亡後の鎌倉と戦国」の3部構成で、60話からなる。鎌倉という土地に照準をあわせて、鎌倉武士や庶民の生活、信仰や合戦の様子、さらに鎌倉幕府滅亡後の戦国時代にいたるまでの鎌倉についても紹介している。こちらも「そもそも鎌倉御家人とは、どのような身分・職制なのだろうか?」「市中で御家人たちが暮らした高級住宅地とはどこか?」などといった硬軟織り交ぜた多岐にわたるテーマが扱われていて、どこから読んでも楽しめる。

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