新書大賞2021 大賞受賞・斎藤幸平先生 講演動画を公開中!

いつまで続く、朴槿恵の強硬姿勢

武貞秀士(拓殖大学客員教授)

 北朝鮮政策、米国との同盟関係強化、中国との関係緊密化で成果があったということで、朴大統領に対する評価は上昇し、昨年七月に行われた世論調査では、政権に対する国民の支持率は六三%に達した。大統領選挙の得票率が五一・六%であったことを考えると、大幅に支持を伸ばしている。

 朴大統領の戦略の基本にあるのは、米中と協力して北朝鮮に接し、軍事的には万全の備えをして日本に譲歩を迫るというものだ。

 昨年六月、朴大統領は訪問先の中国で、「東北アジア地域には、経済的力量と相互依存が増大しつつあるにもかかわらず、過去の歴史から始まった葛藤はより深刻化され、政治・安保面の協力は後退する・アジア・パラドックス・が現れている。このような状況を克服するためのビジョンとして東北アジア平和協力構想を推進する」と述べた。この地域で未来の政治と安保分野の協力を推進するために、過去の歴史からくる葛藤を解決しないと韓国が見なす国家は、その枠組みから外すという「未来志向」の宣言であった。外されるのはもちろん日本だ。

背景にある国力への自信

 韓国の専門家と議論すると、東アジアの信頼醸成のプロセスは、中国、米国、韓国の協調でやり、日本を除外しても大丈夫という「未来志向」の議論に圧倒されることが多い。その背景には外交面、経済面での国力への自信がある。

 国連事務総長は韓国人であり、国際金融関係のトップにも韓国人がついた。ソウルの西にある仁川市に、GCF(グリーン気候基金)の事務局を誘致することに成功した。サムスンはソニーを追い越し、現代は健闘している。こうした自信に加え、中国の台頭、日本の国際的影響力の低下、日本経済の苦境という現実を踏まえれば、中国重視、日本外しという「未来志向」の戦略は、韓国にとっては極めて合理的なのだろう。

 また、韓国の反日には、韓国が国際社会でさらに躍進するためには、日本の存在が障壁になっているという側面もある。

 一月十五日、朴大統領は訪問先のインドで、国連安保理改革について、「常任理事国を増やすよりも、定期的な選挙を通じて、変化する国際環境にも能動的に対処できるやり方で非常任理事国を増やすほうが望ましい」と表明した。

 韓国は日本の常任理事国入りに反対しているが、韓国のメディアの論調などから見えてくるのは、「アジアでは韓国が次の常任理事国になる」という目標だ。韓国政府は、「日本は戦争の償いをして、中国、韓国の同意を得なければ」と繰り返してきた。さらに、常任理事国の増加そのものに反対し、日本の目標を妨げる。その本音は「日本が常任理事国になれば、韓国がなれないから」ということだろう。

 また、昨年九月にアルゼンチンで開かれた、二〇二〇年の五輪大会開催地決定の会議では、韓国の二人のIOC理事が東京に支持票を投じなかったようだ。韓国には、二四年の五輪を釜山に誘致する構想があるからだ。二〇年に東京で五輪が開催されたら、二四年に釜山での五輪開催は不可能になる。隣国であるため、韓国が力をつければつけるほど、日本と利害が対立する構図だ。

 一方、経済面では、中韓の部品貿易が急速に伸びており、中国の税関総署の統計では、二〇一三年一〜十一月の中韓貿易の金額は約二五〇〇億ドル(二五兆円)と、前年同期比七・四%増となった。この時期の日中の貿易額は同六・二%減の約二八四〇億ドルであった。中韓貿易との差は約三四〇億ドルであり、逆転するのは時間の問題になった。

 韓国の中国への輸出は、サムスン電子、LG電子のスマートフォン、ポスコの自動車用鋼板、厚板などで、二〇一三年の韓国の輸出額に占める中国の割合は初めて四分の一を超えた。日本と韓国の貿易は一三年、一〇・四%減っている。

 日本人旅行客は韓国への旅行を控えるようになり、韓国への外国人旅行客は、一三年、初めて中国人が最多となった。韓国経済は急速に「日本」から「中国」に乗り換えつつある。

 こうした状況下で就任した朴大統領が最初から反日の姿勢をとったことは、韓国にしてみれば当然のこととなる。朴政権の反日姿勢は、韓国の国益を考えた「未来志向」の戦略であり、韓国にとって現時点でそれはうまくいっているといえるだろう。

バラ色の国家戦略

 韓国のこの姿勢は、いつまで続くのだろうか。中国の国際的地位が上昇し続け、中国経済が右肩あがりを持続し、日本経済が弱体化し日本の国際的地位が没落し続けるのであれば、正しい選択であるに違いない。それは時間がすぎてみないとわからない。朴政権発足時の韓国の判断は、日本が北東アジアの主要な地域大国として復活しないという判断であった。

 二〇一一年から一三年まで、韓国に滞在して大学の教壇に立ちながら韓国での国際会議や、学者の集まりで、討論をする機会があった。韓国人専門家からは「日本はどうしてこのような発信力のない弱い国家になったのか。気の毒な日本」「韓国は日本の国際的地位を計算する必要がなくなった」という話ばかりを聞いた。東日本大震災と原発対策で疲弊した日本は、アジアの指導的国家として考える必要がないという雰囲気が韓国には満ちていた。韓国がアジアの先頭に躍り出るとき、経済分野と歴史認識問題で日本を封じ込め、中韓協力を強化して、米国の支援を得れば大丈夫という判断があった。

1  2  3