「カンニング不可能」と言われる中国のオンライン入試はどう行われているのか。新型コロナを乗り越え、いち早く成長を果たした決め手は14億人総動員の「人海戦術」だった

ポスト・コロナの中国「新常態」
西村友作

「カンニングはほぼ不可能」な中国のオンライン入試

受験生が準備するものは、ウェブカメラ付きのパソコン、スマートフォン、解答用紙、筆記用具。受験じたいはオンラインの仮想空間で行われるが、実際にパソコン操作をして試験を行う現実空間は、受験生以外に誰もいない部屋であれば場所は問われない。

試験はオンライン会議ツールを使用する。

一つの試験会場の規模は、試験監督官が2人、受験生が10~20人程度。受験生は事前に送られたミーティングIDとパスワードでログインし、カメラの調整を行う。

具体的には、パソコンに接続されたウェブカメラは、正面から顔と両手が見えるように設置し、スマホのカメラで側面から受験生と机全体を映し出す。

試験前の検査も厳格だ。

周囲に参考資料などが無いか、事前に準備した解答用紙上に書き込みが無いかなど、時間をかけて細かくチェックされる。それが終わると、オンライン上に試験問題がアップデートされる。

【写真】対外経済貿易大学に設置された通門管理システム。QR コードをスキャンするとゲートが開く 2021年9 月、筆者撮影.jpg対外経済貿易大学に設置された通門管理システム。QR コードをスキャンするとゲートが開く。2021年9 月、筆者撮影

受験生はまず問題をすべて解答用紙上に書き写し、それが終わると正式に試験が開始される。試験中にも厳しいチェックが行われる。ランダムに指名された受験生がスマホを使って部屋の状況をライブで報告し、異常が無いか検査を行う。

万が一、席を立つなど受験生の異常な行動を発見した場合、室内環境に変化が無いか再チェックを行う。

このような試験前、試験中の厳格な監督により、「カンニングはほぼ不可能な状況」(受験生)という。

問題を解き終えたら、スマホに事前にインストールしておいた専用アプリを使って解答用紙をスキャンしPDFに変換、指定されたメールアドレスおよびウィーチャットのオフィシャルアカウントへと送付する。監督官が受け取りを確認した後、ログアウトして試験終了となる。

このようなオンライン筆記試験は、受験者が少人数であること、問題数が少なく思考問題が中心であることなど、導入できる条件は限られている。約1000万人が受験する「高考」や400万人弱が受験する「考研(カオイェン。修士課程入試のこと)」への導入は、現時点では難しいだろう。

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