2020年、最高の盛り上がりを見せた中国のEC商戦。女性インフルエンサーが一日で904億円売り上げることもあるライブコマースは今や脱貧困・格差是正の救世主に
ますます活況を見せる中国のオンラインショッピングはどこへ向かうのか
西村友作
新型コロナの感染を抑え、いち早くプラス成長を成し遂げた中国。2002年より北京に在住する中国・対外経済貿易大学国際経済研究院・西村友作教授によると「中国には覇権的な政治体制だけでは説明できない、重要な経済ファクターが存在する。民間需要を取り込み、政府主導で建設が進む『数字中国(デジタル・チャイナ)』がその答えであり、オンラインショッピングの動向はその典型」と言う――。
禍福は糾える縄の如し
中国前漢の時代に記された歴史書『史記』には、「禍福は糾(あざな)える縄の如し」という記述がある。幸福と不幸は表裏一体の関係にあるという意味だ。
甚大な「禍」が降りかかったのは、旅行や飲食といったサービス業である。
新型コロナが流行した2020年上期、国内外すべての団体旅行が禁止となり、上海ディズニーランドや北京の故宮博物院なども休業。春節(旧正月)期間中、地域住民や観光客に人気の「北京国家体育場(鳥の巣)」に足を運んでみたが、人はまばらで閑散としていた。
スポーツやコンサートなど、不特定多数の観客が集うイベントも軒並み中止となった。経営体力が限られる小規模企業を中心とする外食産業では、グループでの会食を禁止する通知が出されると、売上が激減しそのまま店をたたんだケースも少なくない。
小さなバーを経営する友人は「2020年の赤字は80万元(約1360万円)。倒産寸前だった」と肩を落とす。
リアルな消費現場に「禍」が降りかかる一方、「福」が訪れた産業もある。人と人の接触が不要なインターネット産業である。その代表例がオンラインショッピングだ。