中国では「朝鮮族」が韓国カルト布教の橋頭堡に 統一教会もガンガン進出
※本稿は、中公新書ラクレ『現代中国の秘密結社 マフィア、政党、カルトの興亡史』の一部を抜粋・再編集したものです。
- 朝鮮族を通じて伝わる韓国カルト
- 正統派よりも異端カルト信者が増える環境
- 統一教会の中国への進出方法
朝鮮族を通じて伝わる韓国カルト
中国の各都市における新天地教会の信者数は、『聯合ニュース』の報道にもあるように東北地方(旧満洲)の諸都市が突出して多い。これは韓国経由の主流派のプロテスタント教団や、統一教会や摂理など他の韓国系新宗教についても同様の傾向がある。
その大きな要因はこの地域、特に吉林省東部の延辺朝鮮族自治州に「朝鮮族」と呼ばれる少数民族が多く居住していることだ(以下、本書では中国国内の朝鮮系少数民族を「朝鮮族」、朝鮮系の民族集団全体を「朝鮮民族」と書き分ける)。
朝鮮族は、20世紀前半まで日本の植民地期などに朝鮮半島から中国東北部に移住した人々の末裔で、朝鮮語を解してハングルを用いる。彼らは中国語と朝鮮語(韓国語)の両方に堪能で、現在の人口は180万人以上。なかでも吉林省の延辺朝鮮族自治州の首府・延吉市は人口の約6割が朝鮮族で占められ、韓国・北朝鮮に次ぐ朝鮮民族のもうひとつの文化的中心地となっている。
現在、朝鮮族は中国国内で五六民族のひとつに数えられているのだが、他の少数民族と比べても中国国家への帰属意識が強く、漢民族との関係が比較的良好なことで知られている。
延辺に対しては韓国からの主流派のプロテスタントの働きかけが盛んであり、過去には韓国キリスト教会の出資で延辺科学技術大学(現在は延辺大学に編入)が設立されたり、公認教会(三自委員会系)である延辺教会の巨大な建物が再建されたりもした。しかし、それと同じくらいカルト的な新宗教の進出も盛んだ。
もともと朝鮮民族は、日本の植民地時代にプロテスタント信者が抗日運動を担っていた歴史的経緯もあってキリスト教徒が多い。これは中国国内の朝鮮族も同様で、2013年時点で延吉市のクリスチャン人口は約4万人であった。ただし、このうちで中国政府が公認する三自委員会系の教会の信者は2.8万人ほどで、残りは政府非公認の家庭教会や、韓国経由のプロテスタントや新宗教の信者であるとみられている。