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神保 謙 追悼 中山俊宏 孤独な探究心を持ったヒューマニスト

神保 謙(慶應義塾大学教授)

 混沌とした国際情勢のなかで道標を提示できる人は多くないが、中山さんは明らかにその中心的な存在になっていた。だからこそ、ロシアのウクライナ侵攻後に、日本社会は中山さんの言論を求めたのだろう。そしてそれは見事だった。

 生前、「確信する絶対主義者」と「悪しき相対主義者」のどちらにもなりたくないと言っていた中山さんは、厳然たる世界のパワーバランスを踏まえつつ、国境を越えたヒューマニズムを尊重していた。立場の違いを超えて中山さんの言葉に耳を傾け、共感する人が多かった理由だと思う。

 中山俊宏さんはかつて自らの孤独な探究心を重視し、人から理解されないことに、むしろ価値を感じていたように思う。同時に中山さんは、米国大統領であれ思想家であれ、自分と同じような孤独な探究心を持った人を見出そうとしていたようにも思う。

 だからこそいつもフェアネスを重視して、人の評価が不当に害されることに対して立ち向かうことを恐れなかった。中山さんが目を細めて愉快そうに語るとき、自分と同じ価値の在りかを見つけたという幸福を伝えたかったのだと、私は思っている。

◆中山俊宏〔なかやまとしひろ〕
1967年東京都生まれ。慶應義塾大学教授。青山学院大学大学院博士課程修了後、同大学教授や防衛省参与などを歴任し、米国政治・外交の分野を中心に国際政治学者として活躍。2022年5月1日、くも膜下出血により死去。享年55。著書に『アメリカン・イデオロギー』『介入するアメリカ』。

神保 謙(慶應義塾大学教授)
〔じんぼけん〕
1974年群馬県生まれ。国際政治学者。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了後、同大学准教授などを経て現職。著書に『アジア太平洋の安全保障アーキテクチャ』、共著に『現代日本の地政学』『検証安倍政権』など。
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