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弘兼憲史×楠木 新 60歳からは身軽で新しい自分へ――「人生の仕上げ」の秘訣を語る

弘兼憲史(漫画家)×楠木 新(元神戸松蔭女子学院大学教授)

「男のプライド」が邪魔をする

楠木 ある意味、物以上に捨てるのに困難を伴うのが、「気持ち」ではないでしょうか。特に男性の場合は。


弘兼 はっきり言うと、「変なプライド」ですね。「若い頃から海外を飛び回って仕事をした」「どこそこの支店長をやった」という類いの。でも、会社を辞めてから、例えば町内会の会合に出ていったときに、職歴なんかは何の意味も持ちません。


楠木 意味がないどころか、こだわっていたら有害です。


弘兼 そう。にもかかわらず、その場でマウントを取ろうとして煙たがられる人が、困ったことに結構いるわけですね。


楠木 そういうタイプは、やっぱりある程度偉くなった人に多い。


弘兼 厳しい言い方ですが、過去の栄光にすがるというのは、そのときが人生のピークだと認めることですよね。それでは、楠木さんのおっしゃる「転身力」など、望むべくもないでしょう。

転身力.jpg

楠木 「変なプライドを捨てられない」のは、「今はやることがない」状態の裏返しだと思います。会社を引退してからでも、新しくやるべきことを見つけた人は、「上から目線のウザいおやじ」にはなりません。(笑)


弘兼 やることがいっぱいあって、過去にかまっている暇なんてないから。ただ、新しいことといっても、何をやったらいいのか分からない、という人も多いのでしょうね。


楠木 ある地方都市の市役所の人事課長に、こんな話を聞いたことがあります。65歳までの継続雇用制度が導入されたとき、全国の人事担当者を集めた研修が行われたんですね。出席してみたら、東京や大阪のような大都市圏の役所に勤務している人は、定年後に何をしたらよいかと不安を抱えていて、驚いたというのです。実は地方ではそうでもない。例えば、実家の農作業や自治会、消防団の役員など、地元は定年退職者を手ぐすね引いて待っているそうです。

 見方を変えると、地方のほうが社会とつながる機会が多いのかもしれません。そういう意味では、現役時代の仕事と無関係な農業や地域の役割などを自分から進んでやろうという柔軟な発想があれば、第二の人生の可能性は広がると思いますね。
弘兼 銀行員だったら、キャリアを生かしてコンサルを、という方向に行きがちだけど、その市場は限られます。少し郊外に出て、ネギやキャベツを運ぶ仕事もいいな、と思えるか。簡単ではないかもしれないけれど、そういう切り替えができれば、楽しい人生を送れそうな気がします。


楠木 まあ、農業というのはあくまでも一例です。でも、主体的に動いてみて意外と楽しいことに出会っている人は少なくありません。

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