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"お子様政治"では日本は変わらない

対談●引退したから話せる政治のウラオモテ
森喜朗(元首相)×藤井裕久(民主党最高顧問) 司会 鈴木美勝=時事通信解説委員

藤井 私は大先輩の鳩山威一郎さんに「政治家になれ」と言われて、初めは断ったんですよ。最初から政治家を目指すのだったら、役人になどなるのはやめなさい、と言いたいですね。政治家になるための踏み台にするのは、実にけしからん話で。

 やっと憧れの財務省に入って、局長のかばん持ちで政治家に会いに行ったら、局長が馬鹿よばわりされる。政治家って偉いんだ、僕のいるところはここじゃない、といって転身してくる若いのが多いんですよ。

藤井 今の話で思い出しましたが、大蔵次官の息子でマスコミに就職する人は多い。親が若い記者に「次官、どうなってるんですか」なんてやり込められる姿を見ていますからね。同じ発想でしょうか。(笑)

 とにかく議員だからと威張って、ずっと目上の官僚なんかに「おい、君」なんて言う馬鹿が増えました。人の話はまともに聞かないし。つくづく、ここはもう俺のいるところじゃないな、と。「まだ早い」とたくさんの方に言われたけれども引退を決めたのは、これ以上ああいう連中とくんずほぐれつやっていたら、こちらがおかしくなると思ったのが一番の理由です。(笑)

藤井 お気持ちはよく分かります。それは党派を超えた話。ただわが党の場合は、そういう人たちはあらかた離党してくれました。ありがたかったですね。(笑)

昔はモノが「決められた」ワケ

─森さんたちが若手だった頃と今とでは、国会のどこが一番変わったと感じますか?

 議員になって初めの頃は、与野党の乱闘もしょっちゅう。そのうちに「牛歩戦術」なんてのが出てきて......。

藤井 "自・社対決"の時代ですね。「牛歩」については思い出があって、自民党で新任で議院運営委員会の理事をやっていた時、「あれはまあ馴れ合いだから、『一人一〇秒かける投票を、五秒に縮めてもらえませんか』と頼めばいい」と、ほかならぬ社会党の先生から教わった。(笑)

 彼らは政府自民党の言うことに理があると思っても、振り上げた手をなかなか下ろせないんですよ。背後に総評がいるから。簡単に妥協して組合の機嫌を損ねたら、票もカネも出なくなる。質問だって、我々にというより傍聴席の組合関係者に聞かせるためにやるんだから。それでも我々は与党なのだからと、寛容と忍耐の精神で、自分たちの質問時間は極力削って、法案の早期成立を目指したのです。
 で、最後どうするかというと、私は文教委員会にいたんですが、日教組と話をつけに行くわけです。社会党系と共産党系があるから、それぞれ手分けして話して、「採決は許す」という妥協を取り付ける。でも彼らは採決の動議と同時に、委員長の解任決議案を出そうとするんですね。受理されるとそちらが先議になるので、阻止しなければならない。それが私の役目で、決議案を持った人間を足を出して転ばせたり、身を挺して止めたり。

藤井 体は大きいし丈夫だし、この上ない適任。(笑)

 最後はどさくさに紛れて決議案を取り上げて、丸めて食べちゃう。そんな状況だから、国会では話し合いになんてなりません。なぜならないかといえば、彼らに「主義主張」があったから。頭で分かっても、自民党の言うことに「納得した」とは、口が裂けても言えないのです。だから社会党にとっては、自民党が強引に事を進めてくれるほうが助かったわけ。

藤井 出来レースを演出していれば、組合に対しても言い訳できますからね。

 その結果、あの頃のほうが「決められた」。実は。皮肉なことに今は自民党と民主党の向いている方向はほとんど同じなのに、「決められない」。すぐに政局が絡んで、細かな部分で折り合いがつけづらくなっている。

藤井 おっしゃる通りです。加えて、さきほど「情」の話をしましたけど、今の若い世代は両党ともにそうしたものに対する拒絶反応が強いから、すべてを理屈でやろうとする。結果、ぶつかったまま時間ばかりが経過して、けっきょく何も決められないという状況がありますね。

──衆参のねじれも、与党の提案を通りにくくしている大きな要因です。

藤井 ただ私は、二院制である以上、違わなかったらおかしいと思うのですよ。ねじれないのだったら、一院制にすればいいんです。そう発言したら、参議院議長に怒られましたけど。違っていることを前提に、どうやって話し合い、調整していくのか。ルール作りこそ、考えるべきことだと思いますよ。

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