日本は何位? 新型コロナ対応国別ランキング
感染防止と経済活動維持のトレードオフ
次に経済被害について確認したい。経済被害を小さく抑えた国として、台湾、トルコ、中国、韓国、ベトナムが挙げられる。
ランキング上位の台湾が代表的だが、これらの国は「コロナ被害」も「経済被害」もいずれも軽微にとどめている点が特徴だ。巷間では、感染防止と経済活動維持はトレードオフだと言われるが、これらの国では、両方を達成している。つまり、感染者が少ない状況が所与であれば公衆衛生対策として厳しいロックダウンをせずに済み、感染が拡大しても初期であれば、局所的、短期的な封じ込め措置で感染抑制に効果があるため、感染抑制と経済活動維持の両立が容易になっているとも言える。
なお、昨年春の感染拡大期には、中国や欧米各国でロックダウンが実施されたが、WHOは必ずしもこの施策を推奨していない。WHOが基本的な手段として挙げているのは検査・追跡・隔離などの政策である(本稿ではTest Trace Isolateの頭文字からこれを「TTI政策」と呼ぶ)。
ロックダウンも物理的な隔離政策の一種と言えるが、貧困層は接触の多い産業に従事している場合が多く、ロックダウンが貧困層の生活をさらに苦しめること、とりわけ低所得国では貧困層が生活を維持するため、経済全体で接触の機会を減らせず、感染抑制の効果が限定的になることをWHOは懸念している。実際に、インド(総合一六位)では世界最大のロックダウンを断行したが、思うように感染者数は減らず、経済活動を段階的に再開する「封鎖解除」に転じた。
理想的にはTTI政策、およびマスク着用やソーシャルディスタンスの確保といった基本的な感染予防策で抑えることが望ましい。先の「ゼロコロナ」の国々は基本的にはTTI政策を行いつつ、クラスターが発生した場合には局所的なロックダウンを実施している。
ちなみに、WHOはロックダウンを推奨してはいないが、国際通貨基金(IMF)はロックダウンについて、感染者数抑制に効果があり、早く、厳しく実施するほど感染者を減らす、それが早期の経済活動の再開にもつながる可能性があると評価している。
これは先に見た感染抑制と経済活動維持を両立している国にも当てはまり、ロックダウンによって経済的な被害を受けてしまう人たちへの支援、セーフティネットを確保し、実効性を担保した上でのロックダウンは、感染抑制と経済活動維持の双方に効果をもたらす可能性があるとも言えるだろう。「ゼロコロナ」を目標とする国は、医療逼迫の状況を見てロックダウンに踏み切るのではなく、新規感染者やクラスターの状況を見て局所的なロックダウンを早期に行うことで、感染抑制と経済活動維持の両立を達成できていると考えられる。