スマート・ベニューの先進事例における新たな官民連携とスポーツ×デジタル化への期待

日本スポーツ産業の過去と未来 アフターコロナを見据えて(第3回)
矢端謙介(株式会社日本政策投資銀行 地域企画部担当部長《執筆当時》)

地域活性と収益力向上で描かれる明るい未来

そして2021年6月には経済産業省が地域×スポーツクラブ産業研究会第1次提言を公表した。

研究会では、「サービス業としての地域スポーツクラブ」が、地域社会・経済の新しいエンジンのひとつに成長する可能性がないかを議論し、(1)「学校部活動の地域移行」についての、大方針の明確化、(2)全ての競技で「学校部活動単位」に限らない、「世代別(U15/U18 等)」の大会参加資格に転換、(3)「スポーツは、有資格者が有償で指導する」という常識の確立、(4)学校の「複合施設」への転換と開放、「総合型放課後サービス」の提供、(5)「スポーツ機会保障」を支える資金循環の創出、を提言している。

特に(5)については、スポーツ産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)と(国内外の国境を越えた)ボーダレス化に対応し、トップスポーツと地域スポーツが「車の両輪」となって資金を循環させることが必要と述べている。

コロナ禍とアフターコロナを見据えても、今後、スポーツ産業のデジタル化と、それに伴う成長は大きく進んでいくと考えられる。その一方、スポーツ産業には地域活性化というミッションを担えるポテンシャルがある。

今回はアリーナを核にした新たな官民連携、地域創生のスマート・ベニューの代表事例として青森県八戸市に立地するアリーナ「FLAT HACHINOHE」を取り上げたほか、スポーツ産業におけるデジタル化の先進事例を紹介した。スポーツを活かした地域創生に加え、今後はデジタル化によるスポーツ産業の収益力向上が相乗効果を発揮し、わが国スポーツ産業の明るい未来が描かれることを期待したい。

矢端謙介(株式会社日本政策投資銀行 地域企画部担当部長《執筆当時》)
群馬県前橋市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1995年日本開発銀行(現 日本政策投資銀行)入行。情報企画部、ロンドン駐在員、審査部、SMBC Europe出向。企業金融第5部(エネルギー業界)、広報室長を経て、2019年より地域企画部担当部長(2020年度より経営企画部担当部長兼務)(執筆当時まで)。
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