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スマート・ベニューの先進事例における新たな官民連携とスポーツ×デジタル化への期待

日本スポーツ産業の過去と未来 アフターコロナを見据えて(第3回)
矢端謙介(株式会社日本政策投資銀行 地域企画部担当部長《執筆当時》)

財政負担を抑える特徴的なスキーム

こうした状況を受け、八戸市が八戸駅西地区における多目的アリーナの建設について同社に相談。同社による建設・運営を前提に事業を進めることとなり、2017年12月に八戸市とクロススポーツマーケティングが共同記者会見を開き、発表した。

その事業スキームは特徴的で、完全な行政主導による施設の建設・運営や、一部の指定民間事業者が運営を請け負う方式とは異なる。市が区画整理保留地を購入、クロススポーツマーケティングに30年間の土地無償貸付を行い、同社のノウハウで多目的アリーナを整備し30年間運営する、官民連携の事業スキームである。整備資金の一部には、市を通じて政府からの地方創生推進交付金も充当された。

b71e0437e4f61ec31b244d55c6cd84c55257c463.jpgFLAT HACHINOHEの全景(写真提供:FLAT HACHINOHE)

八戸市は年間1億円の使用料で2,500時間の利用枠を30年間設定し、学校体育や市民利用等に活用する。市の利用枠以外の時間では、東北フリーブレイズの試合のほか、同社の努力により様々なイベントを誘致し、事業成立を目指す。

地域再生計画「八戸スポーツビジネス創出事業」作成時の整備運営スキームでは、市の財政コストは、市利用枠の支出とアリーナ運営事業者からの固定資産税収入等を積算して23.6億円(30年間)を試算していた。

市が公設公営でアリーナを新設する場合の48.6億円、利益を生み出すプロフィットセンター化したアリーナを新設する場合の64.2億円よりも財政負担を低く抑えられると見込んでいる。

2020年4月、「FLAT HACHINOHE」はアイスホッケー利用時には最大3,500人、バスケットボール利用時は最大5,000人を収容可能な多目的アリーナとしてオープンした。

市民の利便性と経営のバランスを考慮した次世代官民連携スキームで整備・運営され、アリーナを核とした街づくりを担う「スマート・ベニュー」先進事例として、政府の掲げるスタジアム・アリーナ改革やスポーツを核とした地域活性化にも資するモデルとなっている。

741de727aa17a4b8e877f33cba2e76b3d4ba3d92.jpgアイスリンク(写真提供:FLAT HACHINOHE)

コロナ禍の影響で、予定されていたイベントの多くが中止を余儀なくされたが、現在は、地元店舗出店のマルシェ開催といった地元密着型イベントや、アイスショー等のトップスポーツイベントを開催している。

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