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意外にも面白い政治家本の世界  urbansea

毒舌、調整、政治改革……
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竹下登の真骨頂

 宮澤のライバルであった竹下登もオーラルヒストリーを遺している。『政治とは何か 竹下登回顧録』だ。ただ不幸にも聞き取りの最中に竹下は病気で入院し、そのまま帰らぬ人となる。そのため極限状態の話し合いを経ての中曽根裁定などについては語らぬままとなっているが、それでも充分面白い。

 本書でしびれるのは、竹下の秘書出身の国会議員で、「参院のドン」と呼ばれるまでになる青木幹雄について語るくだりだ。

「僕が青木[幹雄]にも至らんのは、(僕は大臣を)やろうと思っていたんですね。青木君は今度も、『私は後で結構です』と言ったから、あの方が偉いなと思ったんだけれど」

 竹下特有の回りくどい言い回しであるが、大臣になることを遠慮し続ける青木を、このように評価している。ここに「汗は自分でかきましょう。手柄は人にあげましょう」の竹下の真髄を見もするし、自分に仕える身であった青木を褒め上げることのできる竹下の凄味を見もする。

 また竹下に対しては、田中角栄の子分であったとの印象を持ちやすいが、もともとは佐藤栄作の佐藤派に属していた。本書から伝わるのは、竹下にとって佐藤派にいた時代、とりわけ佐藤内閣の官房長官の時代こそが政治家としての青春だったことだ。なぜ竹下は田中角栄を裏切ったのか。本書を読むうち、その心性が感じ取れていこうか。

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