大井赤亥 1993年体制と「3・2・1の法則」――政治的選択肢の健全な拮抗のために

大井赤亥(広島工業大学非常勤講師)

「3・2・1の法則」

 政界再編が生み出した三極構造は、2012年以降、「保守」を占める自民党に対して「リベラル(旧革新)」と「ネオ・リベラル(改革)」が対峙する形で、ほぼ固定的な力関係の下に推移している。

 2021年衆院選では、立憲と共産は小選挙区での候補者一本化を図る野党共闘によって自民党との一騎打ちに持ち込み、これによってようやく、政党対立は自公と野党共闘による二大政党ブロックへ収斂するかと思われた。しかし結果は予想に反し、立憲や共産は後退、自民は持ちこたえる反面、維新が41議席へと躍進した。このことは、日本の市民社会に「改革」を支持する世論がなお根強いことを窺わせる。

 2022年参院選では維新のさらなる躍進が見込まれたが、しかし、自公の安定的勝利の前に維新は依然として関西中心の勢力圏を突破できず、頭一つ抜き出た自公に二つの野党が対峙する三極構造が続いている。

 2022年参院選の比例における得票数を見ると、自公は2444万、野党(立国社共れ)は1713万、維新は785万となり、この比はそのまま「3・2・1」となる。この力関係は、2010年代を通じて大きな変化はなかった。すなわち、2012年衆院選以降、都合8回の国政選挙の比例得票数を見ても、この三極構造は「3・2・1の法則」とでも呼ぶべき安定的力関係のまま推移しているのである。


(続きは『中央公論』2022年10月号で)

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大井赤亥(広島工業大学非常勤講師)
〔おおいあかい〕
1980年東京都生まれ、広島市育ち。東京大学法学部卒業。同大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。専門は政治思想、現代政治。東京大学、法政大学、昭和女子大学などで政治学講師を務める。著書に『ハロルド・ラスキの政治学』『武器としての政治思想』『現代日本政治史』など。
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