増田寛也×砂原庸介 「地方消滅」予測から10年――コロナ後の首都圏回帰
増田寛也(日本郵政株式会社社長)×砂原庸介(神戸大学教授)
人口ダムは維持せざるを得ない
砂原 私たちの調査でも、多くの人が住む東京圏内の東京志向は非常に強い一方で、非東京圏の人たちは必ずしも強い東京志向を持っていない傾向が見られます。就学や就業以外で人々が動きにくくなっている。つまり、人を動かすことが非常に難しい状況になっているし、動かすためのツールもあまりない。そこが厳しい問題だと思います。
人口ダムについては、それが有効かどうかというより、維持を目指さざるを得ない状況だと見ています。
東京の一極集中も一定程度までであればいいところも多いと思いますし、すべて否定するわけではありません。しかし、中核都市のようなところから人がいなくなってしまうのはよくない。今まで都市として築いてきたインフラを使わなくなってまで東京に行くのがいいかというと、それは違うと思う。現在ある資産をいかに有効活用するかが、中核都市では重要だと考えています。
人口5万人とか10万人といった地域であっても同様です。これまでに整備されたインフラを捨ててみんなが東京に移ってしまうようなことがあると、東京に新たなインフラを整備しなければならなくなる。それは行きすぎだと私は思います。