山東昭子 女性初の派閥領袖経験者が語る政界のリアル
山東昭子(参議院議員)
昔の派閥は本音で話ができた
当時の田中派は、今の派閥とまるで格好が違いました。
親分の下に人が集まり、親分と幹部がお金を集める。新人議員の場合、選挙区で頼まれた陳情は自分ではまだ処理できないから、派閥の先輩たちに頼んでカバーしてもらう。法案や予算についても同様です。選挙の時にできた借金を、幹部の人たちが割り勘で払ってくれたりもしたそうです。そんな世界でした。
なにより、派閥のメンバー全員が、田中角栄という人と直に本音で話ができました。総裁選で中曽根康弘さんを候補に決めた時、実は当初、私は反対しました。派閥ではみな自分の意見をどんどん言って、反論されて、説得されて、それはもう、いろいろありましたよ。そのような経験を経て政治家として成長していったのです。そういう本音の話ができるのが、本物の派閥だという気がしますけどね。
今の永田町に、田中角栄のような人がいるかと言えば、うーん......。派閥の領袖と言っても、ごく一部の人とだけ、本音で話をしているかもしれないけれど、全員とはどうでしょうか。だから、私に言わせれば、今はもはや「派閥」という感じはしないですね。