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「富岳」の正体② スパコン開発に必須な「技術への投資感覚」 

清水俊幸×聞き手:小林雅一

「国力」とは優秀な人材

─よく「スパコンはそれを開発する国の国力を反映する」と言われますが、日本の強みとは何でしょうか。

 われわれのチームメンバーは、一人ひとりがとても優秀です。長い経験を積んできたベテランはもちろん、CPUやスパコンをやろうと富士通にきてくれた優秀な若手も多い。これは大規模プロジェクトの効果だと見ています。今回、官民共同で大きな投資をし、そこに優秀な人材が集まったから富岳ができました。まさに「国力を反映する」と言われる所以でしょう。

─新入社員の時から「スパコンをやりたい」と言って入社してきた人も多いのですか。

 結構います。(二〇一一年に)京が有名になったこともあり、その頃入社した若い技術者らが富岳プロジェクトでもずいぶん元気に働いてくれました。

─清水さん自身の経歴は。

 私はもともとコンピュータがやりたくて入社しました。最初は研究所で並列計算機をやっていましたが、それが事業化することになり、以降はいろんなコンピュータを開発してきました。

─現在のスパコンに代わる量子コンピュータへの関心が高まっています。これはどの程度現実味がある話なのでしょうか。

 量子コンピュータは、いわゆるコンピュータやスパコンとは全く違います。まずプログラミングが違うし、カバーできる得意分野も異なるのです。一部の問題を高速に解ける可能性はありますが、今まで培った技術がムダになるわけではなく、むしろシステムとして得意な分野が増えるということだと思います。従ってスパコンの開発はこれからも必要です。

─現在のスパコン研究者も量子コンピュータに関心を持っているのですか。

 人それぞれだと思います。新し物好きや技術に磨きをかけたい向上心の強いエンジニアは量子コンピュータにも関心があるでしょう。私は興味はありますが、勉強が足りない。

─最後に「二位じゃダメなんでしょうか?」(民主党政権の事業仕分けの際、スパコン「京」開発に対して蓮舫議員が投げかけた発言)も含め、政治に対する要望があれば。

 われわれ技術者は常にベストをめざして開発に取り組んでいます。技術者なら一位をめざすのは当然です。二位、三位を狙っても目論見通り取れるわけではありません。

 政治のかかわりでは、いろんな人がいろんなことを発言するのは、むしろ良いことだと思っています。蓮舫議員の発言の後、東大をはじめ多くの大学の先生方が嘆願書を出されて、スパコンがいかに大事かを訴えてくれて感激しました。議論はどんどんして、そこから何が大事かを冷静に見極めていくことが必要だと思います。

 


 このインタビュー記事は簡略版です。完全版は小林雅一著『「スパコン富岳」後の日本』(中公新書ラクレ)でご覧いただけます。

〔『中央公論』2020年11月号より抜粋〕

「スパコン富岳」後の日本

小林雅一

 世界一に輝いた国産スーパーコンピュータ「富岳」。新型コロナ対応で注目の的だが、真の実力は如何に? 「電子立国・日本」は復活するのか? 新技術はどんな未来社会をもたらすのか? 莫大な国費投入に見合う成果を出せるのか? 開発責任者や、最前線の研究者(創薬、がんゲノム医療、宇宙など)、注目AI企業などに取材を重ね、米中ハイテク覇権競争下における日本の戦略や、スパコンをしのぐ量子コンピュータ開発のゆくえを展望する。

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清水俊幸×聞き手:小林雅一
◆清水俊幸〔しみずとしゆき〕
富士通 プラットフォーム開発本部 プリンシパルエンジニア。


【聞き手】
◆小林雅一〔こばやしまさかず〕
KDDI総合研究所 リサーチフェロー。
1963年群馬県生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。同大学院理学系研究科を修了後、東芝、日経BPなどを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などを経て現職。『AIの衝撃』『AIが人間を殺す日』など著書多数。
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