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鈴木涼美 夜のオネエサンのお金事情、財布に800円でも嗤える明るさ(内田百聞『大貧帳』を読む)

第4回  夜のオカネと昼のオカネ(内田百聞『大貧帳』)
鈴木涼美

月給制で気楽な会社員、入る現金の割に気持ちが安定しない夜のオネエサン

 簡単に言ってしまうと、オカネに問題がないときに気楽なのは圧倒的に昼職会社員の方です。昼間きちんとした会社に勤めているとそれなりに時間も奪われますから、そんなに毎月毎月海外で散財することもないし、ギャンブルやオカネのかかる恋愛など特殊な散財をしていない限り、ものすごく追い詰められることはまずないわけです。そして追い詰められていないとなると、月給制というのは実に何のストレスもなく過ごせるシステムで、オカネのことなんかひとつも考えない日常を送ることができます。オカネ以外のことで、例えば彼氏が連絡をくれないとか上司がワーカホリックでうざいとかいうことでストレスが溜まることこそあれ、特に悩みにオカネが絡んでこない。

 逆に、オカネにそれほど問題がない時にも軽いストレス状態を免れないとはいえ、オカネに問題を抱えているときにそれほど深刻にならずに済むのは夜のオネエサンの方にみられる傾向です。先ほど、年収にすれば大きく偏りがないとは言ったけれど、毎月入ってくるオカネに上限がないという意味では夜職の時というのはオカネ持ちです。なのに何故か追い詰められていない時でもそれほど満たされた感じがしないというか、オカネのストレスがゼロとはなかなかならないものです。それは常に成果主義であるがために、もっと稼げるという甘い誘惑と隣り合わせだからなのかもしれないし、働くのが嫌になったら途端に収入ゼロになるという不安があるからかもしれない。そういう意味では入る現金の割には気持ちは安定しません。

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