2000年前の暮らしぶりに共感の声続々!?ロールプレイング形式で古代中国を楽しめる異色の新書が話題!(第1回『古代中国の24時間』)

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた
中央公論新社の若手営業社員2人が交互に自社のヒット本の売れているワケを探りつつ、しれっと自社本を紹介していく本企画。記念すべき初回では、昨年11月に発売された柿沼陽平『古代中国の24時間』(中公新書)を取り上げます。発売前からネット書店を中心に予約が相次ぎ、発売後即重版が決定。その後も順調に版を重ねています。なぜ今売れているのか――。若手営業社員の荒井がその理由を探りました。

膨大な史料を読み込んだからこそ描ける「日常」

まずはじめに本書が扱うテーマに注目してみます。本書は、一言で表すとすれば、古代中国、主に約2000年前の秦漢時代を生きた人々が、どういった日常を過ごしていたかを解説した本になります。一見すると普通そうな内容に思えますが、この「日常」を描ききったことこそ、本書のヒットの理由になっているようです。

これまで古代中国でよくテーマになっていたのが、始皇帝、諸葛亮、曹操など戦国時代を彩る英雄や諸国の抗争に焦点を当てた歴史でした。そこで扱われるのは、「有名」な英雄などの華々しい活躍などです。対して、当時を生きた「無名」の人々の生活の細部にまで踏み込んだ本はありませんでした。同じく人気のある古代ローマでは、すでにアルベルト・アンジェラ『古代ローマの24時間』などの労作が出ている一方で、古代中国では未踏のテーマだったのです。

それもそのはず、当時の日常を書くためのまとまった史料はなく、随所に散らばっている史料を地道に繋ぎ合わせていくしかありません。途方に暮れそうになる、かなり骨の折れる作業です。そんななか、その偉業を成し遂げたのが本書でした。巻末にある膨大な注記はその苦労を物語っています。まさに待望の書でした。

2000年前も今も人間はやっぱり変わらない!?

次に、本書の内容に入って、2000年前の古代中国の生活を具体的に見ていくと、目から鱗の連続でした。

少し例を挙げるだけでも、当時の人々が「何時に起きて何時に寝たのか」、「一日どのくらい働いていたのか」、「室内ではクツを脱いだか」、「トイレはどのように済ませたのか」などなど、思えばよく知らなかった事実ばかり。ドロドロしたところでいうと、夫婦の不仲や嫁姑問題など内容も含んでおり、読んで身につまされる方もいるのではないでしょうか......。さらには、夜の営みについてもかなり詳細に書かれていて、人間根本のところでは変わらないとしみじみ思わされます。

日常の細部を一つ一つすくいあげていくにつれ、当時の生活がありありと甦ってきて、当時を生きた人々に対してシンパシーをより感じる内容になっている点もヒットの理由になっていそうです。

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