新書と専門書の間―"選書"とは一体何なのか!? ~『分断の克服 1989-1990』『日本の保守とリベラル』中公選書が今熱いワケ!~

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた 連載第12回

~注による安心感・選書ならではの面白さ~

また、『分断の克服1989-1990』に注や参考文献がたくさんついていることについて、その書きぶりからも納得感があります。ためしに一部を抜粋してみると、

 

"ドイツ側議事録及びゲンシャーの回顧録によると、会談の最後にゴルバチョフは、「全ヨーロッパ的なプロセスと、ソ連と西ドイツ政府との関係が好転するならば、ドイツ問題についても進展がありうるだろう」と述べたからだ。この発言をゲンシャーは、「ドイツ統一への門はすでに開かれた。いまやすべては、われわれがそこにいたる道を全ヨーロッパ的な展開の一要素とするかにかかっている」という「明白なメッセージ」だと受け止めた。ソ連指導部はドイツ統一自体への心の準備はできており、「いまや問題はその環境と時機なのだ」というのが、ゲンシャーの評価であった"

 

このように「」でくくられた引用によって文章をつなぐことがとても多く、私はこの「」が恣意的な解釈などをされずにそのまま記されることによって、ひとつ言い方を間違えれば戦争になるという緊張感が伝わってきて、ものすごく面白かったのです。「」によって引用であることがわかるだけでなく、その典拠を示す注や参考文献の存在が(実際に原典にあたることまでしないにせよ)さらに本書を意義あるものにしているように思います。

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