清水亮 企業の不正が世間を騒がせた今年「AI」を社長にしてみた。AIの経営判断は<残酷>だがほとんどの場合<人間よりマシ>である
AIを社長にしてみた
23年1月、新宿のレストランでささやかなパーティを開いたときのこと。
「オレは社長に向いてない」
集まってくれた昔の仲間たちを前にこう言った。
「だからもう社長はやらない」
するとヤジが飛んできた。見ると25年来の付き合いがあるエンジニアで、経営者だった。
「もしかしてAIが社長に!?」
そのヤジを聞いて、それもありか、と思った。
常々、自分は「これからの会社や仕事はAIによって根本的に変わる」と言っていて、数年前から「AIを社長にする方法」について考えてきた。
なお、社長という役職は「人間でなければならない」と決まっているわけではない。犬やネコが社長を務める会社も存在していたと聞く。
そこで日本のインターネット広告の先駆け的な存在であるオプト株式会社の創業メンバー・海老根智仁さんと二人でAIが社長を務める会社を作ることにした。それが「FreeAI株式会社」である。
ここでの「Free」は、「無料」ではなく「自由」の意味。社長は、AIスーパーコンピュータ継之助(つぐのすけ)が務める。24年1月1日から営業予定で、その事業内容は、社長であるAIスーパーコンピュータ「継之助」のレンタル事業とAIスタートアップへの投資事業。ただし法律上、代表取締役については人間(自然人)でなければならないため、代表取締役社長秘書を雇うことにした。
筆者自身は2003年に最初の会社を設立して以来、20年間で15社の設立に関わってきた。今年だけで、体育会系AIの会社と知識系AIの会社、イベント会社にAIサービス運営会社、AIデータ作成のための一般社団法人という5つを作っている。
エンジニア兼シリアルアントレプレナーとしてはなかなかの数と思うが、なぜこんなに会社を作ってきたのかといえば、事業ごとに会社を作る方が合理的だからだ。今の会社は資本金がかからない。1円でもいい。取締役も最小限でOK。資本の入れ方も分配も、かなり自由度が高くなっている。
なお、今年作ったそれぞれの会社のステークホルダーは異なり、全ての会社で筆者は社長を務めていない。それぞれのプロジェクト別で会社は動き、それぞれの会社の事業としてプロジェクトが進んでいる。
この仕組みによって、成果が出た時には利益を共有でき、出なかった時はそれぞれの有限責任をとるだけで済む。基本的に社員は雇わず、必要に応じて業務委託。社員がいないので、会社はいつでも解散できるというわけだ。