「街に失業者があふれようがおかまいなし」ビッグテックがAI開発に全力を注ぐ真の理由とは..「貧富の差」「モラル」を無視して進む<人工知能民主主義>に希望はあるか

人工知能はウソをつく【最終回】
清水亮

「バブル崩壊」ではないのが恐ろしい

こうした話が「ビッグテックバブルの崩壊を意味していない」のが、また恐ろしいところだ。むしろビッグテックのいくらかは過去最高益を出すなど、ますます儲かっている。

そもそも、不要なほど大量の人員を抱えていた目的には、ある意味、ライバル企業の研究開発を妨害することがあったと思われる。

しかし、注力を続けてきたAIが研究開発のフェーズを終えて、実装フェーズに入った。そうなれば、年収2000万円から一億とも言われているエンジニアを雇っての<フェイクワーク>などにお金を使う必要などなくなる。そして人員を絞り、経費を圧縮すれば、利益はますます上がる。これは当たり前だ。

失職者がたくさん生まれている状況から考えると、同じ場所で信じられないくらい不公平な事態が起きているのだが......もはや我々には、ビッグテックの製品を使い続けるしか選択肢が存在しない。

やはり23年7~9月期に最高益を叩き出したFacebook。今アプリを開けば、写真を無断使用された著名人が宣伝をし、あたかも大企業が仮想通貨をスタートしたと発表するような「偽広告」で溢れかえっている。

Facebookを運営するMeta社もAI研究の先駆者であり、Facebookの扱う広告の審査は全てAIが行なっている。それなのに偽広告が氾濫しているのは、彼らが使っているAIの性能が足りていないからに相違ない。

AIの性能が上がるか、アメリカ政府がより真剣にこの問題に取り組むようになるまで、おそらく偽広告は表示され続けるのだろう(ひょっとすると、アメリカ国内では既に表示されておらず、この問題はスルーされているのかもしれないが)。

ともあれ「偽広告」が大量投下される裏で、無数の被害者が産まれ続けている。「最高益」が「偽広告」によって達成されたと思うと、著者は素直に拍手することができない。

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