東大・大人気「ジェンダー論」教授、「森発言のどこが悪い」派に伝えたいこと
年長者、いかに生くべきか?
─「森さんには時代的制約があって、年長者の考え方や価値観は今さら変えられない」との同情論があります。年長者は、今の時代にどのように振る舞えばよいのでしょうか。
人権感覚を時代や世界にあわせてアップデートさせていくべきでしょう。上に立って差別をするリーダーに対して、同情する必要はありません。アップデートできない人は、指導的な立場から退場すべきです。パソコンの新しい機能が使えないのと同じだと思ってください。
退場しないのであれば、「聞く耳」を持ってほしい。森さんにはそれすらなかったのだと思います。聞く耳がないから、女性が長く発言しているように聞こえるのではないか。自分がしゃべっている間に人が黙って聞いていることを意識しないから、あんな発言になってしまうのです。
オジサンたちは森さんのようにレッドカードを喰らって無様に退場させられないためにも、若い人や女性の意見をもう少し尊重してください。たとえば「子どもが熱を出したから帰ります」「保育所のお迎えがあるので失礼します」「育児休業を取得したい」という男性に向かって、オジサンは自分の常識を振り回さないでください。今は、共働き世帯は専業主婦世帯の二倍以上。主体的に育児に関わりたい男性は多いはずです。
私は大学の講義の中で、就活生にOB・OG訪問では三十代の働き方を見てきなさい、とりわけ子持ちの女性の管理職が複数いる会社かどうかを見なさいとアドバイスしています。二十代は夜中まで働くという働き方もあるけれど─もちろん、電通で過労死した高橋まつりさんのような悲劇は困りますが─、三十代でもそれを続けたら子育てはできない。子持ちの女性の管理職が複数いる職場は、ワーク・ライフ・バランスがとれていて、無理な残業や無駄な呑み会など、非合理的な仕事の進め方をしないはずです。
『就職四季報』に女子版があるのですが、講義では男子学生必見と紹介しています。女性の既婚者数、平均勤続年数、有給取得状況などが掲載されているからです。「女性の既婚者が多い会社なんか、おばあちゃんばっかりやからやめとこう」なんてアホなこと考えたらアカンと(笑)。女性が結婚したくらいで働けなくなる会社は、男性にとってもブラック企業です。