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倉部史記 絶句する生徒、憤る教員

大学入試改革に翻弄される高校生と教員たち
倉部史記(高大共創コーディネーター)

大学選びのリサーチが不十分に

 かねてから文部科学省が進めてきた高大接続改革、その節目として計画されてきたのが21年度入学者選抜だった。筆者自身は、高大接続改革の趣旨に概ね賛同する立場だ。

 大学進学率がとうに50%を上回った今では、大学は一部のエリートや高度専門職を育てるためだけのものではない。その前提で教育の仕組みや環境を再整備するべきだろう。基礎学力だけを問う一般入試と、基礎学力を問わないAO入試のような二極化したこれまでのやり方は、社会状況に合わない。現在では進学後の中退率が2割を超える大学や学部も珍しくないが、こうした入試や進路指導のあり方にも問題があったのだろう。

 21年度入学者選抜からは、高校で学ぶ主要教科の基礎的な知識・技能に加え、思考力・判断力・表現力や主体性・多様性・協働性といった能力を「学力の3要素」として多面的・総合的に評価することとなった。各大学は自校の教育方針を卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受け入れの方針で社会に示している。

 入学後の教育方針が異なれば、入学者選抜で問われる学力のあり方も大学ごとに違ってくる。受験生はこうした情報を比較検討しながら自分に合う進学先を選び、入学者選抜の準備を進める。これが高大接続改革の趣旨だ。

 そのためには高校3年間で時間をかけてリサーチし、各大学や学部の違いをしっかり理解しておく必要がある。今回のコロナ禍は残念ながら、その部分を直撃した。従来以上に綿密な準備が求められる入学者選抜であるにもかかわらず、21年度入学者選抜の受験生たちは例年以上に乏しい情報で臨まねばならなかったのだ。

 高校生が進学先を決める過程で大きな役割を担ってきたのが、各大学が行うオープンキャンパスだ。大学説明会や各学科の模擬授業、キャンパスツアー、教職員や学生による相談コーナーなどが主な内容で、例年なら大学進学者の9割以上が参加する。だが20年度は大半の大学が、感染予防の観点からこの重要なイベントの中止を余儀なくされた。

 多くの高校では、進路指導の一環として1年生の段階からオープンキャンパスへの参加を生徒に推奨している。3年生ともなれば、参加は必須と指導することも多い。夏期休暇期間中に2校以上のオープンキャンパスへ参加せよと具体的に指示したり、参加レポートの提出を課したりする高校もある。もはや進路指導にとって必要不可欠な行事なのだ。その中止は高校側の指導計画にも大きな影響を与えた。

 21年度には、定員を厳格に絞り、事前申込制を徹底してオープンキャンパスを実施する大学も増えた。それでも多くの高校は感染リスクを考慮し、以前のような「絶対に参加せよ」という指導は行っていない。20年度に続き、21年度も各地で緊急事態宣言が発令・延長されたため、オープンキャンパスの計画を急遽変更した大学も少なくない。

 オンラインでの広報活動に注力した大学も多いが、高校生の参加状況は必ずしもよくない。ある地方国立大学の理系学部が20年度に女子受験生へ向けて開催したオンライン説明会の参加者は1名だけだった。21年度は、高校でも、オンラインの企画を進路リサーチに活用せよという指導が各所で広がった。結果的に、熱心な生徒は効率的に活用し、たくさんの情報を集めたが、そうでない生徒はまったくアクセスしないという二極化が起きている。

「一番心配な生徒に限って、アクセスしてくれないんですよね......」と言うのは、静岡県のある県立高校の教員だ。本来、高大接続は、このような生徒の進学を支えるものだったはずなのだが......。
(後略)

倉部史記(高大共創コーディネーター)
〔くらべしき〕
1978年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学職員や予備校の研究員を経て、フリーランスで高大接続、高大共創の事業に関わる。追手門学院大学客員教授。著書に『看板学部と看板倒れ学部』『大学入試改革対応!ミスマッチをなくす進路指導』など。
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