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佐藤 信 オンライン婚活プラットフォームの現代史

佐藤 信(東京都立大学准教授)

ITと相談所の幸せな結婚――IBJ系列

 まず注目したいのはIBJの系列である。IT化に興味を持って日本興業銀行を1999年に退職した石坂茂がこの業界に参入したきっかけは、身分確認不要の出会い系掲示板の管理を引き受けたことだった。いかにも怪しいので、彼は逆に男女ともに課金して本人確認をする「ブライダルネット」を翌年立ち上げた。前述したように、結婚事業への新規参入の壁は高く、当初は女性会員を無料にしたうえ、街でビラ撒きをして80人を集めたという。事業は1年で黒字化し、2003年にはヤフーの子会社となった(石坂、2013)。

 ここで画期的だったのが、10%程度で伸び悩んでいた成婚率を改善するため、石坂らが仲人の利用を思い立ったことであった。石坂らは06年にMBO(会社の経営陣が、自社の株式や一事業部門を買収し、会社から独立する手法)で株を買い戻して再び独立、IBJを立ち上げる。IBJは日本結婚相談業協会(現・日本結婚相談所連盟)を設立して、所属する結婚相談所が利用料を払うことでIBJのマッチング・システムを利用できるウィン・ウィン関係を構築した。こうしてオフライン、オンラインの双方に対応したIBJはその後も事業を拡大している。近年も18年にはDiverse(ダイバース)、19年には前述のサンマリエ、20年にはZWEI(ツヴァイ)といった有力企業を事実上子会社化して巨大グループとなっている。

 ここで買収されたDiverseという企業について触れておこう。その起源はライブドアにある。09年モバイル事業部にいた津元啓史(つもとひろし)が、事業部の責任者であった出澤剛(いでざわたけし)(現・LINE社長)の指示でマッチング・サービスを担当することになった。当時、提供されていた関連サービスには1999年に立ち上がっていた「youbride」と2000年に立ち上がっていた「ワイワイクラブ」があったが、前者がやがて婚活に特化したのに対して、後者は一部にアダルト写真掲示板を含む「出会い系」から恋活に特化して「YYC」と名を変えた。津元率いるこれらマッチング事業はNHN Japan(後のLINE)からミクシィに移管されて13年にミクシィの子会社Diverseとなり、前述の通り現在はIBJの傘下に入っている。ライブドア、ミクシィ、LINEといった巨大IT企業はオンライン婚活の発展と深い関係を持つのである。

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