石田光規 最適化・リスク回避を目指す人間関係の行く末
石田光規(早稲田大学文学学術院教授)
人づきあいをコストパフォーマンス(費用対効果)でとらえる動きが最近の若者にみられる。地縁・血縁のような強制的なつながりが縮小する時代の人間関係のあり方を、石田光規・早稲田大学文学学術院教授が論じる。
(『中央公論』2023年1月号より抜粋)
(『中央公論』2023年1月号より抜粋)
近年、物事を効率よく、最短距離で処理しようという動きが加速している。人間関係も例外ではなく、私の周りには「つきあう友だちはコスパで選ぶ」とあっけらかんと話す大学生もいる。
たしかに、人づきあいにはお金も時間もかかる。したがって、そこにコストパフォーマンス(費用対効果。以下コスパ)の意識が入るのは、そう意外なことではない。とはいえ、友だちは、コスパ感覚から最も離れた存在だったはずだ。損得抜きにつきあうつながりだからこそ、そこに美しい友情が育まれるのである。この短い論考では、友だち関係さえもコスパでとらえてしまう現代社会の人間関係について考えてゆこう。