牛窪 恵×山田昌弘×干場弓子「結婚に恋愛は必要なのか?」

牛窪 恵(インフィニティ代表取締役)×山田昌弘(中央大学教授)×干場弓子(BOW&PARTNERS 代表)

豊かさが子どもの数を絞らせる?

干場 韓国と日本で共通しているのが、少子化の原因が未婚化であることを政府が見逃した点です。子育てと仕事の両立支援や出産給付金など、支援は出産後のみ。結婚や子育てを後押しする経済的側面が、政策立案段階でタブー視されていたのも問題だと、先生もお書きになってますね。


山田 約30年前、低収入の男性はなかなか結婚できないと指摘したら、厚生省の官僚が、「学者はいいなあ。僕が同じことを言ったら首が飛びます」とこぼしていましたからね。


干場 日本では中流からの転落不安が強いとも書かれていますね。


山田 かつては貧しい人が多く、格差があっても将来は上向く見込みがあったから結婚できたけれど、豊かな時代に育った今の若者たちは、現状維持で精一杯。維持ができなくなるようなリスクのある結婚はしたくないのです。若い人たちはとにかくリスクを嫌いますからね。


牛窪 リーマンショックのころから「普通」に価値を感じる若者が増えた印象です。普通がいつまで続くかわからない、現状維持でいい、などは大きな不安の表れだと思います。


山田 アジアの出生率が極端に低いのは、経済的安定を求め、親と同居するパラサイト・シングルが多いのも一因です。北西ヨーロッパやアメリカ、カナダでは、成人後は親から離れて自立生活を送るのがデフォルトです。1人よりは2人で暮らすほうが経済的なので同棲するし、同棲していれば子どもが生まれる。こうして婚外子が増えるのですが、日本や韓国、イタリアのように豊かな親のもとで生活していると、なかなかそこから踏み出せない。

 ただ最近、イタリアでは婚外子が増えてきたようです。イタリア研究者によると、親と同居する女性の家に男性が転がり込んでくるそうです。


牛窪 日本だけじゃないんですね!


山田 アメリカでも自立の時期が遅くなり始めたと懸念する研究者もいます。ラテン系・アフリカ系に変化はありませんが、白人・アジア系で少子化が進んでいます。豊かになるほど、豊かさを維持するために子どもの数を絞ろうとするのです。日本でも戦後、親の世代が貧しかった時期には、1世帯4人以上の子どもがいたわけですから。

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