スポーツと地域活性化 コロナ禍を経て見直される社会的価値

日本スポーツ産業の過去と未来 アフターコロナを見据えて(第2回)
野沢亮太(株式会社日本政策投資銀行 地域調査部 調査役)

「アオーレ長岡」がもたらした地域活性化

 このスマート・ベニューの先駆的な事例として新潟県長岡市の「アオーレ長岡」を紹介したい。アオーレ長岡は、老朽化した長岡市厚生会館の建て替え事業として、市民協働・交流の拠点とするべく08年に基本設計計画に着手し、2012年に完成した。

 施設はJR長岡駅に直結し、アリーナ、交流ホール、屋根付き広場、市役所の一部機能などが一体化した多機能複合型にその特徴がある。約131億円の建設費は長岡市が負担し、運営は民間(NPO法人ながおか未来創造ネットワーク)が担っている。アリーナはBリーグの新潟アルビレックスBBのホームゲームをはじめとしたスポーツ興行や音楽ライブ、イベント、催事等多目的に利用されている。利便性の高い立地と高い稼働率により、平日休日を問わず市民による集いやにぎわいの拠点となり、周辺の歩行者数が1.5倍に増加するなど、中心市街地の活性化の効果をあげている事例となっている。

 この「スマート・ベニュー」が地域にもたらす効果としては、(1)地域アイデンティティの醸成(世代/階層を超えた交流、定住人口の増加)、(2)「街なか」の賑わい創出(消費拡大や都市の魅力向上)、(3)交流人口の拡大(来街者増などを含む周辺への経済効果)などが主に挙げられる。

 しかし、現在新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛やスポーツイベントの収容人数制限などの影響をうけ、このうち、(2)「街なか」の賑わい創出と(3)交流人口の拡大、というスタジアム・アリーナの域外から人を集める空間としての経済的な機能は、大きく停滞していると言わざるを得ない。

 その一方で、(1)地域アイデンティティの醸成については、コロナ禍においてもその効果をもたらし続けていると思われる。ここで、スポーツによる地域アイデンティティの醸成や地域コミュニティの強化といった、スポーツの社会的価値に関する日本政策投資銀行の調査をひとつ紹介したい。

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