安東能明 静岡県で冤罪事件が多発したのはなぜか。その背景にいた『昭和の拷問王』の正体に迫る

『蚕の王』著者、安東能明氏インタビュー
安東能明

――「昭和の拷問王」紅林麻雄とはどういう人物だったのでしょうか。

元々は非常に優秀な刑事であったのだと思います。捜査能力が高く、二俣事件の発生までに多くの事件を解決に導き、警察内で表彰を受けた回数は200回近くに上ります。

web用_TY20291.jpg『蚕の王』著者、安東能明さん。「紅林は優秀な刑事だったが、その能力を悪い方向に使ってしまった」

ですがその高い捜査能力を、悪い方向に使ってしまった。犯人と、犯行に及ぶまでの動機に及ぶまでの筋書きを、すべて紅林自身で用意したのです。

それに基づいて犯人に仕立て上げた人物に取り調べと称した拷問を行い、自白を強要する。裁判所でも用意した筋書きを淀みなく述べることで、周囲の人間に信じ込ませてしまう、とんでもないストーリーテラーです。

現に二俣事件では、1、2審で犯人に仕立て上げた青年に死刑判決が下っています。加えて当時の浜松地裁では、警察と関係性の深い裁判官が多かったので、味方につけやすかったようです。そんな場で紅林ほどの実力者に滔々と語られたら、もはや独壇場だったのではないかと推測します。

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