山崎怜奈 歴史と現在は地続き――時事の見取り図を手にするために

山崎怜奈(タレント)

社会のシステムを動かすための思考実験

 その後に読んだのが、成田悠輔さんの『22世紀の民主主義』(SB新書)です。

 前半では、現在の民主主義やソーシャルメディアがうまくいっていないことを、データを挙げながら明らかにしていきます。たとえば、新型コロナの封じ込めは民主主義的な国ほど遅れる、ということをグラフで示してくれるので説得力があります。そのうえで、後半では民主主義がどうすればうまく働くようになるのかについて、成田さんなりの新たな見識や見解を、一つの思考実験のようなかたちで提案していきます。

 一人一票が本当に正しいのかという疑問があります。「若者は選挙に行け」とよく言われますし、私もそうしたほうが良いとは思いますが、とはいえ、年代によって人口比が大きく違うなかで、人数が少ない若者が選挙に行っても変わらないよな、と思ったりもします。成田さんはそこに触れて、個別の論点ごとに投票したらいいんじゃないかと、わかりやすく書いてくださっています。

 提示されている思考実験に賛成か反対かより大切なのは、世界的にも具体的な展望が見えないなかで、「まあしょうがないよ、これが当たり前だもんね」と思考を止めてしまわないこと。成田さんは「こういうふうにすればどうだろう」と、思考の歯車にオイルを差してくれているような気がします。

 この本がベストセラーになったのは、何十年も前に作られた世の中の仕組みを、もういい加減変えたほうがいいんじゃないか、というニーズが社会の根底にあるからだと思います。


(続きは『中央公論』2023年3月号で)


構成:戸矢晃一

中央公論 2023年3月号
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山崎怜奈(タレント)
◆山崎怜奈〔やまざきれな〕
1997年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2020年帯ラジオ番組「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。」パーソナリティ就任。「歴史・文化を軸にした東京の魅力発信に係る懇談会」委員を兼務。著書に『歴史のじかん』。初のフォトエッセイ『山崎怜奈の言葉のおすそわけ』が3月16日刊行予定。
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