ユーラシアの行方を握るインドの大国外交

日本国際フォーラム上席研究員・広瀬公巳氏が解説
広瀬公巳(ひろせ・ひろみ)

中央アジアとの関係

 現在のインドからの北西への広がりにはパキスタンとアフガニスタンという二枚の壁があり、インドはその先にある中央アジア諸国と関係強化を図っている。化石燃料に乏しいインドは資源が豊富な中央アジア諸国との関係を重要視しており、「TAPI(トルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタン、インド)天然ガスパイプライン」構想の構成国にもなっている。タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンの三か国はアフガニスタンと国境を接しているため、アメリカ軍撤退後の地域協力を進める上で重要な存在となっている。2021年暮れにはインド・中央アジア対話の第三回外務大臣会合がニューデリーで開催され、貿易と経済協力を確認した。中央アジア5か国の外相は、モディ首相を表敬訪問し、インド各紙は、2022年のインドの共和国記念日の主賓は中央アジア5か国の首脳になると報じた。

 126日の共和国記念日はインドの祝日で、1950年のこの日にインド憲法が発布されたことを祝う。815日の独立記念日や102日のガンディー生誕記念日とともにインド国民にとって最も重要なものとなっている。軍の壮大なパレードが行われる式典には外国の首脳が主賓として招かれることが慣例となっており、式典への招待はインド国外の首脳に贈られる最高の栄誉とされている。2018年には東南アジア諸国連合(ASEAN10か国の指導者がまとめてゲストとして招待され、インド外交の多極化と地域大国としての影響力の確立を示した。共和国記念日への中央アジア諸国の主賓参加は新型コロナウイルスの感染拡大で見送られたが、インドを含む六か国はオンラインでの首脳会議を記念日の翌日の1月27日に開催し、アフガニスタン問題など広範なテーマについての協力を確認した。

 モディ首相は2015年にすべての中央アジア諸国を訪問し接近を続けてきた。中国は中央アジア5か国と同様のオンライン形式による国交30周年記念の首脳会議を行っている。

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