ラーム・エマニュエル 駐日アメリカ大使インタビュー「中露の強権は見過ごせない――私の使命感と家族の歴史」

ラーム・エマニュエル(駐日アメリカ大使)

日米と中露の違いとは

 日米同盟はかつてないほど強力になり、その必要性が増しています。我々は、自由か専制か、開放か抑圧か、協力か強制かという戦いに直面しています。ロシアによる残忍なウクライナ侵略、そして中国による強圧的な経済政策によって、こうしたせめぎあいが白日の下にさらされることになりました。自由と法の支配、共通の利益や価値観に支えられた世界に住むことを望むのか。それとも、強い国がむき出しの力によって相手を自分の意思に従わせるような世界に住みたいと思うのか。それが問われているのです。

 アメリカと日本、中国とロシアには大きな違いがあります。日米には共通の利益、共通の目標に向かって協力する友好国、同盟国、パートナーがいます。中露はどちらもそうとは言えないでしょう。

 日米両国は「守りの同盟」(alliance protection)から「打って出る同盟」(alliance projection)へと移行する段階にあると私は考えています。すなわち、二国間の課題への対処を主眼としてきた同盟から、共通の価値観や資源を活用しつつ、地域全体や世界をよりよくするための同盟へと進化、発展していくのです。そのような戦略的な目標に向かう上で、私たちの友好国、同盟国、パートナーのネットワークは、今後ますます重要な意味を持つようになるでしょう。

 確かに日本には、中国とロシアという相当手ごわい隣人がいます。しかし、日本は独りではありません。もちろん、アメリカには日本の安全保障に対する責務がありますが、同時に、日本自身が大変な強さを持っているということを忘れるべきではありません。

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