末井昭 がんがきっかけで健康志向に
家事の達成感
――趣味とは少し違いますが、末井さんは定年退職した人に、家事をお勧めになっています。ご自身が会社を辞めてから、朝食作り、食器洗い、猫の世話、洗濯、掃除......と積極的にやっていらっしゃる。それはどういう経緯で?
今の奥さんと暮らし始めて、彼女が家事をやらないからです。彼女は料理を作るのはうまいんですよ。ただ作るんだけど、台所はやりっぱなしです。食べた後も置きっぱなし。部屋のものも散らかしっぱなしで、整理整頓をしようとなると、いろいろ押し入れの中に入れているものを出して、仕分けしたりしている段階で止まるから、余計に散らかってしまう。そういう感じだから、僕がフォローをしていたら、だんだん楽しくなってきたんです。
――どんなところが楽しいのでしょうか。
まず食器洗いは、やり始めたら徹底的にきれいにしようと思うので、食器は洗剤でよく洗ったら食器かごに順序良く入れて、ゴミも袋に全部入れて、そうするとシンクのステンレスが汚れていることに気が付く。そこを今度は拭いて。丁寧に拭くと光るようになるじゃないですか。終わったときにはもう神々しい感じで光って、その達成感がたまらない。
あと洗濯物も畳みますが、これも好きなんですよね。畳むときに工夫します。タオルは工夫はいらないけど、Tシャツだったら絵柄がぱっと見えるように畳もうとか、パンティは両脇を折って丸めて端を挟み込むとか。きれいに畳めるとこれも達成感があります。僕はそういう単純作業が本来好きなんだと思います。
それに、家事は健康にもいいんです。洗濯物は1階の洗濯機から2階のベランダに持って行って干すので、階段を上がったり下りたりする。猫のトイレ掃除も、猫が1階と2階に2匹いて、トイレも上と下にあるから、やはり上がったり下りたり。洗濯や猫のトイレ掃除だけで強制的に運動をさせられているわけです。
そして、家事をやれば奥さんが喜びますよね。「あ、きれいになったね」と。だから夫婦円満の秘訣でもあります。嫌々やっていると続きませんから、家事はそれ自体を喜びとしないといけないですね。
僕の場合、原稿を書いていて行き詰まったとき、洗濯物を畳むと調子がいいんですよ。いろいろ考えながら畳んでいるでしょう。ただじっと椅子に座って考えていても書けないけど、洗濯物を畳んでいるとふっとアイデアが浮かんだりする。そういう意味で、仕事にうまく家事を取り入れているという気もしますね。