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新・自民党研究

参院選大勝で党内抗争勃発か?
星浩(朝日新聞特別編集委員)×橋本五郎(読売新聞特別編集委員)

橋本 そういう総裁選の経緯もあって、安倍さんは石破さんを幹事長に据えざるをえなかったのですが、そもそも二人は性格的にも合わず、関係はうまくいっているとは言い難い。安倍さん本人だけではなくて、側近もできれば石破さんを切りたくて仕方がないのではないか。自民党の大きな亀裂の端緒になる可能性があるのではないか、という気がするのです。

 自民党の権力闘争は、たとえそれが政治家同士の好き嫌いとかを発端にしたものであったとしても、表向きは日中国交正常化は是か非かとか、拡大経済か緊縮財政かといった政策課題を大義名分にして戦われました。
 今回、選挙後に何が「争点」になるかと考えてみると、例えば秋口には消費税について結論を出さなければなりません。それに農業改革、雇用をめぐる問題、規制緩和をどうするか......。難問山積ですけど、いずれにしても安倍総理は「改革推進」の旗を掲げることになります。そうすると、党内からは「性急に過ぎる」という声が上がって、そこが大きな対決軸になる可能性が高いでしょう。
 ではその時、石破さんがそうしたいわば「安倍改革」の抵抗勢力を糾合できるのか。彼は今まで「改革志向」を口にしてきましたから、その構図で安倍さんと対峙するのは、ちょっと難しいように思いますね。

橋本 そうかもしれません。ただ石破さんを支える人たちにしても、ただ切られたのではたまらないから、何らかのアクションを起こす可能性は高いと感じるのですよ。
 まあ、ある時点で内閣支持率が必ず下がってきます。そうなると、石破さんに限らず、安倍さんに反発する力が相対的に力を増すのは明らかです。

 そうでしょうね。

橋本 政策課題でいえば、私はやはり農業問題は大きいと思います。TPPは「例外なき関税撤廃には反対する」という、ある意味"作戦勝ち"で乗り切りました。でも、そもそも日本の農業をどうするんだというところには、全く踏み込んでいません。他の課題も含めて、改革を具体化する過程で様々な軋みが出てくるでしょう。

 皮肉なことに自民党が勝てば、参議院にはいわゆる族議員とか業界代表のような立場の人が大挙して入ってくることになりますから、彼らが改革の大きな「抵抗勢力」になることも考えられます。そういう意味でも、参院選で勝利したからといって、すべてがうまく進むとは限らないですね。

橋本 全くその通りです。

「離米」と「親米」の対決が始まる

 これはあまり表には出ていませんが、参院選後の大きな対立軸としてはもう一つあって、憲法、安全保障問題をめぐる自民党の根源的な確執が表面化してくるかもしれない、と私は思っているのです。すなわち、憲法を九十六条も含めて改正し、自前の憲法を作ろうという勢力と、今憲法を変えるには多大なエネルギーも必要だから、とりあえずは集団的自衛権の行使ができるように政府見解を変え、日米の連携強化を図ればいい、という人たちのせめぎあいが本格化する可能性です。便宜的に前者を「離米的保守」、後者を「親米的保守」と命名したのですけど、実は自民党は結党以来、この両者の連合体なんですね。
 衆参で憲法改正も視野に入る多数を取った結果、この対立が表面化してくると、党のDNAに関わる問題だけに、安倍さんにとっては、意外にやっかいなことになるかもしれません。

橋本 さっきの改革ウンヌンは、あくまでも政策論だからね。

 そう。六対四で妥協、といったことがあり得るのだけど、これは非妥協的な戦いになる可能性があるわけです。

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