都民ファーストの会の夢と挫折、そしてこれから 岩崎大輔
ズブの素人が都議会議員に
「大阪維新の会は大阪都構想で、行政機構、政治システムの大転換を狙っている。それに比して都ファは東京大改革と掲げたが、政務活動費の飲食での支出禁止、議員報酬の二割カットなど『節約』ばかりで、行政機構の何をどう変えたいのか伝わってこない。自民党が反対するから進まないと返してくるのでしょうが、目指すべき理想が見えてこない。LGBT差別禁止条例を全国の都道府県に先駆けて出しましたが、『都道府県初』という謳い文句やLGBTが今は世間で注目されているから、と流行り物を議会に出すだけで、本当に当事者や都民を思ってのことか」
「都議会自民党若手ホープ」と呼ばれる川松真一朗・都議(墨田区・二期)は、そう断ずる。
川松氏は、一七年の選挙では定数三の墨田区で最後の一枠を、自民党の桜井浩之氏と競り合い一〇三票差で勝ち残った。この都議選で自民党は都議会執行部役員や重鎮も落選し、過去最低の二三議席に沈んだ。川松氏は、異例の選挙だった、と四年前を振り返り、こう続ける。
「一六年の都知事選から都議会自民党はブラックボックスだ、と名指しされ、悪の巣窟のようなイメージのまま都議選となり、小池さんが絶対的な正義で、私なんかは悪の手先扱いで、まったく歯が立たなかった。都政の課題を話したいと思っても政策論争もできず、小池百合子の敵か味方か、改革を進めるのか邪魔をするのか、という印象で評価も左右された」
墨田区のトップ当選は都ファ・成清梨沙子氏で、三万九五三一票を得た。自民党の川松氏、桜井氏の二人の投票数を足しても届かない得票数を「政治経験ゼロ」の彼女が叩き出した。川松氏がこう説く。
「地元議員の秘書や区議を経験もしていない。墨田で生まれ育ってもいない。その意味でしがらみはないのでしょうが、厳しく言えば『ズブの素人』で、地元の方々のために汗をかいて寄り添うことができるか。政治家はバッジをつけてからが始まりですが、つけたら終わりのような印象は拭えない」
都ファは政治経験のない者を出馬させ、「しがらみのない政治を」と訴えた。都民は小池氏が紡ぐ言葉に熱狂し、都ファ候補を議会へと送り出した。
人気テレビ番組だった「恋のから騒ぎ」出演の経歴を持つ無所属の練馬区議・倉田麗華氏は、区議や都議は地元に根づくことが重要と語る。
「しがらみというのか、縁というのか、そこはワードセンスですが、地道に地元を回れるのは秘書や区議の経験がないと厳しい。例えばある地区でお祭りがあっても誰に挨拶していいのかわからない。この地区の会長はお飾りで副会長が実権を握っているなど、ポッと出の人にはわからないことばかり。知らずに会長に挨拶すれば、何も地元のことがわかっていない、という目で見られ、本音で語ってくれない。ズブの素人だった私が区議になって苦労したのはそこでした。地元に根づき、地域の声に耳を傾け、地域社会を良くしていくことは短い時間ではなしえない」