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都民ファーストの会の夢と挫折、そしてこれから 岩崎大輔

岩崎大輔(ノンフィクションライター)

しがらみのない政治の副作用

「しがらみのない政治」を掲げ政治未経験者が議員となった副作用として議会は荒れた。都ファも執行部は旧民主党の都議や小池事務所の秘書で固めたが、築地市場移転や再整備に関する委員会、こども基本条例など深夜どころか明け方までかかった委員会は少なくなかった。都ファにとって議会運営の転機となったのが、二〇一七年十一月の公明党との連携解消だ。

 また、一七年の都議選で公明党は、自民党との連携を解消し、都ファと組んだが、今年三月、再び自民党と手を結び、次期都議選と、秋までに行われる衆院選で、政策協定を結ぶことで合意。

 川松氏は語る。
「都議会を紛糾させた罰則付きコロナ条例案、こども基本条例案が決定的だったのでしょう。都ファの条例案は誰のため、何のために出すのかわからないものが多い。コロナ条例案は各党の反対を受けて引っ込めましたが、『議論のために出した』『問題提起ができてよかった』と逃げてしまう。資料を読めばわかるようなことを平気で聞いてくるなど、枝葉にこだわる。都ファの提出した受動喫煙防止条例案を例に挙げれば、保健所の人的な限界があるのに、保健所職員が飲食店を回ってチェックして、と実効性に乏しいことが記されている。都議会の役割は全体像を示すこと。東京の二三の特別区は独自性が高いので東京都は全体の方向性を示せばいいのに、いきなり各論を詰めてしまう。聞こえやイメージはいいが、中身は現場にそぐわないものや実効性に乏しいものが多い。公明党もこれでは都民の賛同を得られない、と愛想を尽かしたのではないか」

 無論、公明党としての党利党略もある。次の衆院選で、東京一二区は太田昭宏前代表から若手に世代交代が行われるが、浸透しておらず、自民党の協力がなければ当選は厳しい、といわれている。国政選挙での連携を見越した都議選での選挙協力であることは否めまい。ただ、東村邦浩・都議会公明党幹事長は自公政策協定締結発表の会見で、「都民ファーストの会には会派のガバナンスというか、意思がなかなか集約できない。率直なところ難しかった」と語り、その言葉に苦労が滲んでもいた。

 国政同様、都議会でも自公が手を結ぶことになった。都ファと自民党による第一党の座をめぐる争いは激しさを増そう。川松氏は、現状を厳しく見て、こう述べる。

「自然災害など平時ではない時の選挙は、今のリーダーにしっかり対応してもらいたい、という心理が働き、現職や政権与党に有利に働く傾向が強い。しかし、コロナ禍の今、北九州市議選で重鎮を含む六人の自民党候補が落選。千葉県知事選、小平市長選挙、宝塚市長選挙など最近の地方選挙で自民党の候補者は結果を残せていない。四月の広島参院再選挙でも保守地盤にもかかわらず敗れた。これらの敗北は国政でコロナ対策が功を奏していないことや国会議員のスキャンダルに、有権者が厳しい審判を下しているのでしょう」

 コロナ禍にあって、従来のような政治活動は制限されている。川松氏も、毎年一月ともなれば一〇〇件以上の新年会に顔を出していたが、今年はゼロとなった。商店街の催し物や老人会など人が集まることが推奨されない時代となった。既存の選挙活動を重視していた自民党にとってコロナ禍では不利に働く、と川松氏は指摘し、こう言い切る。

「コロナで政治への不満は高まっている。しかし、有権者の半分が選挙に行かない現実があります。その層にアプローチして票を掘り起こせた人が生き残る。無党派の人たちにアプローチできた政治家が勝つのでしょう」

 

(『中央公論』2021年7月号より抜粋)

岩崎大輔(ノンフィクションライター)
〔いわさきだいすけ〕
1973年静岡県生まれ。政治やスポーツをはじめ幅広い分野で取材を行う。著書に『ダークサイド・オブ・小泉純一郎』『激闘』『団塊ジュニア世代のカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた』がある。
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