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日本のインターネットの父・村井純「日本のデジタル化政策は必ずしも失敗ではない。修正する仕組みも整った」

デジタル庁が進めるDXとその課題
村井純(慶應義塾大学教授)

パンデミックで必要に迫られて

――新型コロナのパンデミックによって、デジタル化を受け入れる方向に社会状況も大きく変わりましたね。

 これまでもデジタル化の進展を妨げている何百という法律を改正し、オンラインサービスに道を開いてきました。実際、それにより変化をとげた部分もありました。例えば、商法を改正し、役員会をオンラインで開催できるようにしたことで、社外役員に海外の人材を招聘することができるようになったのです。

 一方で、なかなか変わらなかった分野も多かった。例えば、教育です。学校の授業は教室でやらなければいけないという法律は変えてあったのに、学校側は、風邪で休んだ子供や不登校の子供がオンラインで授業に参加をするための設備を用意していなかったし、先生方も準備していなかった。その必要はないし、必然性もないので、やろうとしなかったのだと思います。

 ところが、今回のパンデミックによって子供たちが登校できなくなると、教育を提供するにはオンラインしかなくなった。必要に迫られたことで短い時間でオンライン授業ができるようになった。このとき、しっかりしたインフラが整備されていたことが功を奏したわけです。急速に広まったリモートワークも含めて、日本のデジタルインフラはその需要に十分耐えられるものでした。

 今回のパンデミックで、多くの国民がデジタル技術の社会基盤性を身にしみて理解したと思いますが、なかでもデジタル環境の利用に対する心や感覚への衝撃は、世界中で日本が一番大きかったのではないでしょうか。その意味で私たちは歴史的な経験をしました。今回の悲劇をある意味で糧として、デジタル社会へとうまく繋がっていければと考えています。

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