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日本のインターネットの父・村井純「日本のデジタル化政策は必ずしも失敗ではない。修正する仕組みも整った」

デジタル庁が進めるDXとその課題
村井純(慶應義塾大学教授)

日本の民主主義と文化に根ざしたデジタル社会を

――基礎自治体の自律を保ったうえでの全国的なデジタル情報の共有は、どのように進めていきますか。

 それぞれの特色を持つ基礎自治体は、コストをかけずにデジタルテクノロジーを使い、それぞれの特色のある自治を推進すればいい。ただし、そのオペレーションは、基礎自治体も中央政府も共通にしていく。

 これができれば、今回のワクチン接種の予約や10万円の支援金給付、あるいは新たな給付金や子育て家庭への支援金などについても、すぐに実施できる仕組みは作りうる。デジタル庁の具体的なミッションは、そうした基盤をこの国のために作ることですし、長期的にはコストをかけずにこうした問題を解決できる社会を作ることだと思います。

――各自治体や各省庁はバラバラなシステムのままで、共通なオペレーションを作っていくということでしょうか。

 バラバラなシステムだから繋がりにくいのはその通りですが、私は、人口1億人以上の国で、トップダウンで一つのシステムを作るやり方はエンジニアとして正しい設計だとは思いません。繋がっていないことは問題に違いありませんが、バラバラなのはある意味でよかった。全体を一つの巨大なシステムで作っていたら変えようがないし、変えようとすれば巨大なコストがかかるので、対応できずにさらに遅れてしまう。

 自律分散型で、かつ全体の調和がとれたシステムを作っていけば、変化があったときに柔軟に対応することができる。その観点から全体のシステムを設計すれば、日本社会の民主主義と文化を尊重した、日本風のデジタル社会ができると思います。

 デジタル庁は、そういった日本社会に合ったデジタルテクノロジーの基盤を作っていく必要があります。

(後略)

構成:戸矢晃一

村井純(慶應義塾大学教授)
〔むらいじゅん〕
1955年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院工学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(工学)。東京工業大学総合情報処理センター助手、東京大学大型計算機センター助手をへて、90年慶應義塾大学環境情報学部助教授。97年同教授。「日本のインターネットの父」と呼ばれる。著書に『インターネット』『インターネットの基礎』などがある。







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