発売半年で初版の35倍!『三千円の使いかた』ヒットの裏にあった3年前からの伏線
あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた
中央公論新社の若手社員が代わる代わる自社のヒット本の売れているワケを探りつつ、しれっと自社本を紹介していく本企画。第4回は、昨年8月に刊行されて以来、異例の大ヒットとなった文庫、原田ひ香さんの『三千円の使いかた』を取り上げます。書店店頭の目立つところには、ドラマ化や映画化の写真がある本が多くあります。文庫市場が厳しいと言われる昨今、映像化などもないなか、なぜここまで売れたのか。若手営業社員の高木がヒットの理由を探りました。
発売直後、営業がざわついた
今回取り上げるヒット本は、原田ひ香さんの『三千円の使いかた』(中公文庫)です。2021年8月20日に発売されて以降、右肩上がりで売れ続けています。家族小説でありながら、タイトルからもわかる通り、ためになるお金の使いかたや、今すぐ実践できる節約術、さらには人生の設計についても学べる、まさに一石三鳥ともいえる本です。
原田さんといえば、『ランチ酒』(祥伝社)や『三人屋』(実業之日本社)など、食べ物を題材にした作品のイメージがあったので、ファンの方にとっては、新しいテーマのように感じたのではないでしょうか。
出版社社員にとって、発売後1週間は緊張の日々。売上の初速が良ければ、重版をかけてさらなる売上を図ります。そして『三千円の使いかた』の初速は...初版部数に対して異常なほど良く、営業経験が長い社員も「こんな数字は見たことない」と言ったほど。発売3日目で異例ともいえる、初版部数よりも多い部数の重版が決まりました。