発売半年で初版の35倍!『三千円の使いかた』ヒットの裏にあった3年前からの伏線

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた

異例の10万部重版

文庫は発売以来、3万部、5万部......と版を重ね続け、夏から冬へ季節も変わってクリスマス間近の2021年12月22日。ここで大きな決断をしました。映像化などのメディアミックスがないにもかかわらず、書店での売れゆきだけで判断し、10万部の重版に踏み切ったのです。これは、中公文庫では少なくとも直近10年はなかった"事件"です。

文庫には"50万部"の壁があると社内で言われており、最近ではなかなかこの部数を超えることができませんでした。しかしここで、大きく重版をかけることにより、宣伝や編集など各部署から、さらに多くの人に手に取ってもらうためのアイデアを募り、最善を尽くせるよう勢いをつけたのです。

年が明けてから、東京メトロ全線での交通広告、4種類の新デザインで拡材作成など、様々な方法で売り伸ばしに努めました。書店店頭でも一等地に置いていただいたり、家計簿売場の横に並べてお金に関する実用書のように売ってもらったりと、多くの方の協力を得て、各書店で文庫売上ランキング上位に何ヶ月も入り続けました。

f000a07463ce45a571463fe7bd171572597aec74 (1).jpg新たに作成した4種類の拡材

店頭で売れ続けるということは、やはり装丁やタイトルの親しみやすさもあったと思います。いろいろな世代が持つ、お金に関しての価値観の物語であり、その入り口としての"三千円の使いかた"という言葉が、現代社会において多くの人に響いたのではないでしょうか。さらに著者の原田さんには、数多くのサイン本作成や、書店の店内放送用の録音をお願いしたこともあり、長期にわたってご協力いただきました。そして2月に入ってから、なんともう一度10万部の重版をかけることができたのです。この時点で46万3千部。発売当初は想像もしていなかった数字に。

現在では、ついに累計50万部を超え、堂々たるベストセラー作品となりました。ヒットまでの道筋は、その作品の数だけあると思います。こんな本を出したい、売りたいと企画したそのときから、色々な人の想いが重ね合わさりストーリーが走り始めます。そのストーリーが完結するのが、皆さんに手に取ってもらう一瞬なのだと痛感しました。

書店でよく目にする"○○万部突破"、"大重版決定"などの文字、ただの宣伝文句ではありません。この裏には多くがその作品のために費やした時間と、そのときどきに抱いた不安や焦り、喜びなどのさまざまな感情がつまっています。そんな風に一瞬でも思ってもらえたら、そんなことを願うばかりです。

三千円の使いかた

原田 ひ香 著

垣谷美雨さん 絶賛!
「この本は死ぬまで本棚の片隅に置いておき、自分を見失うたびに再び手に取る。そういった価値のある本です」
就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?
知識が深まり、絶対「元」もとれちゃう「節約」家族小説!

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