『すごい植物最強図鑑』『コボちゃん傑作選』『ふたごパンダのこころコロコロ』...、「中公らしくない」本をつくり続ける担当編集者が、「らしさ」の謎を語る!!

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた
中央公論新社の若手営業社員が自社のヒット本の売れてるワケを探りつつ、しれっと自社本を紹介していく本企画。第5回は、読売新聞連載40周年記念本『コボちゃん傑作選』のヒットを調べるうちに行き着いた、「出版社らしさ」の謎に迫りました。

「中公っぽい」ってなに?

こんにちは、中央公論新社営業2年目、岡田です!

最近、「中公らしくない」本が売れているような気がします。私が入社してからの刊行で考えても、イラストいっぱいの児童書『すごい植物最強図鑑』や、マンガ『コボちゃん傑作選』、中央公論新社としては初の絵本『ふたごパンダのこころコロコロ』なども好調。

こういった状況をみてふと思うのは、そもそも「中公らしくない」ってなんぞや?ということです。

出版社に入っておいてなんですが、文芸大好きだった私としては、少なくとも単行本などは「○○出版」の本だから買お!という買い方をしたことがないのです。

じつは個人的にも、中央公論新社が期間限定でやっていた季刊誌『小説BOC』の「螺旋プロジェクト」という、8作家が同じテーマ・世界観を共有しつつ、全く違う作品を書くというおもしろ企画(というと語弊がありますが...、言うなれば奇抜な企画?)に惹かれて会社を受けた、という経緯がありまして、どちらかというと「尖ったことをやる出版社」のイメージで入社しました。

しかし、児童書や漫画など、あまり見ない企画が会議に提出されると「うちっぽくないけど大丈夫だろうか...」といった意見もちらほら。あくまで「文芸」の枠組みでのチャレンジだった螺旋プロジェクトとはそもそも違う、というのもわかるのですが...そもそも「うちっぽい/ぽくない」ってなんなのでしょう!?

中央公論新社は「まじめ」な会社なのか?

こういう時はまず歴史から!沿革を見ましょう。↓

 明治時代に雑誌『中央公論』が創刊され、吉野作造の民本主義の論文を世に送り出したことに始まって言論界や文壇を牽引、『細雪』に対する言論弾圧などを耐え、『世界の文学』『日本の文学』などの全集は大いに売れ、中公新書、中公文庫といったレーベルがつくられるように。99年に読売グループとなり、新社として再スタート。(中央公論新社HPより。要約)

 ふむふむ。改めて読むと大変な歴史を持っていますね...。非常に「まじめ」です。

 中公と言えば、本誌『中央公論』はもちろんですが、書籍で有名なのは中公新書でしょうか!中公新書は「教科書の太字になる単語がタイトルになる」と言われることが多いです。そう聞くとやはりファーストインプレッションにたがわず「まじめ」なのか...?

ためしに今月刊のラインアップはどうなっているか見てみましょう。

 

5月刊 中公新書

日本共産党

物語 スコットランドの歴史

戦後日本の安全保障

変異ウイルスとの闘い―コロナ治療薬とワクチン

新版 大化改新

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...なるほど、納得です。な~んてシンプルなタイトル。どれもこれも、「1冊でこのテーマを解説してくれるのか...」と思うとワクワクしますが、印象としてはやはり「まじめ」でしょうか。たとえば他社のベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)とか、『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)なんかがここに並んでいたら、ちょっと異様な感じもする...?

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